116 / 203
第11章:銀級冒険者昇格編(3):騒乱
第116話:石像の魔物
しおりを挟む
マイオル達は決して油断していなかった。
周囲は十分に警戒していたし、遠距離からの攻撃にも気を配っていた。
だがその攻撃は突然やってきた。
これまでの人生で数多の奇襲を受けてきたアッタロスもこの時ばかりは完全に虚をつかれ、居着いてしまった。
だが、彼の横には歴戦の友が出した球体が浮いていた。
その球の特異な性質が彼の命運を分けた。
「魔引!」
レントゥルスは盾球に備わる魔力誘引性能を最大限まで引き上げた。
青い火が盾球に吸い込まれるように引き寄せられていく。そして「ゴウ」と音を立てながら盾球に当たり、火は消えていった。
一拍遅れてアッタロスは身を退き、剣を抜いた。
「レントゥルス、助かった」
「あぁ。喰らっていたら危なかった。盾球にはあまり魔力を込めてなかったが、それでも一撃で壊されそうじゃい」
「全く気配を感じなかった。マイオル、敵はどこだ?」
「一番近くにいる魔物でもかなり距離があります。そこから攻撃が飛んで来たのか、探知に引っかからないのか分かりません。とにかく次撃に備えてください。視野を共有します!」
この時、セネカ達は冷静ではなかった。
方法不明の攻撃に晒されて、共有された【探知】の視野の中で、自分達の近いところしか見ていなかった。
そんな中でガイアだけは冷静に状況を見ていた。
「マイオル! 『扉』があった方向に猛烈な勢いで進んでいく魔物がいるぞ!」
ガイアに言われて、一行は凄まじい速さで移動を進める魔物に目を向けた。
「ガーゴイルの亜種です!」
マイオルが叫んだ。
この時、アッタロスは嫌な予感がした。
その魔物が目的を持って真っ直ぐに進んでいるように見えたからだ。
「防御は俺に任せろ! [豪快]!」
レントゥルスはサブスキルを発動し、盾球を十個まで増やした。もしまた奇襲されても、これなら魔法の誘引が間に合うだろう。
「総員、走れ!」
アッタロスの声が響く。
プラウティアは走りながらポシェットに入っている何種類ものポーションの位置を確認した。これらはキト特製の濃縮ポーションなので、腰に持てる分だけでも様々な事態に対処できるはずだ。
「セネカ、俺の後ろに来い。レントゥルスと一緒に二列目に入るんだ! プラウティア、ガイア! マイオルを守ってくれ!」
全速力で走りながらアッタロスはそう言った。
誰もアッタロスには追いつけなかったけれど、すぐさまセネカとレントゥルスは横に並び、この後の戦闘に備えた。
前列の三人に離されながらも、マイオルは必死に走り、アッタロスに決定的な情報を伝えた。
「アッタロスさん! そのガーゴイルを全力で攻撃してください! 早く!!!!」
先行していたガーゴイルは『扉』があった領域に到着し、膨大な魔力を練って何かしようとしている。
アッタロスは教え子の指示を聞いて、迷うことなく従った。
「[瞬速]! [剣魔]!」
アッタロスは切り札を一つ切った。
[瞬速]により猛烈な速度になった身体からさらに速く魔法が放たれる。
その魔法は光り輝き、剣のような形をしていた。
まるで空気を切り裂くように剣魔は飛び、精神を集中しようとしていたガーゴイルを邪魔することに成功した。
「ギギィ!」
ガーゴイルは悔しそうな声を上げた。
もう少し時間があれば、目論見を完遂できたからだ。
しかし、最低限の目的は達成した。
全員が【探知】の視野を見ていた。
少し前まで巨大な『扉』があった場所に拳大の圧縮された魔力が浮かんでくる。
その魔力は意思を持ったかのように乱回転し、そして、小さな亜空間を発生させた。
「ギギキィィィィ!!!」
その石像の悪魔は嘲笑うような声をあげて、亜空間から流れてくる濃密な魔力をその身に浴びた。
◆
小さな亜空間が発生するのを目にした瞬間、アッタロスはガーゴイルに斬りかかった。
小さい亜空間だとは言ってもそばに居る魔物が力を得て守護者化する恐れがあるからだ。
ガーゴイルは背中に生えたコウモリのような羽を巧みに使い、アッタロスの攻撃をひらりと避けた。そして己の権能を発揮して亜空間を開き、彼方から青い火を召喚した。
アッタロスは危機を察知していたので、すぐに距離を取り、追いかけてきたセネカとレントゥルスの前に立った。
「キキィッ」
癇に障るような鳴き声をあげて、ガーゴイルは別の亜空間を開いた。
亜空間がアッタロスの半身ほどの大きさになったかと思うと、一匹の獣が飛び出し、亜空間はまた閉じてしまった。
「こいつ、亜空間を自由に開けるのか?」
飛び出してきた獣がアッタロスを襲う。
体躯は猫のようだが、頭は二つあり、醜悪な顔をしている。
「こんな魔物は知らねぇぞ!」
双頭の猫がアッタロスに噛みつこうとした時、ガーゴイルも動きを見せていた。その魔物は再度亜空間から青火を召喚しながらアッタロスに飛びかかった。
三方向からの攻撃を受けてしまっては流石のアッタロスもひとたまりもない。だから、セネカは全力で飛び出した。
火の方はレントゥルスがなんとかするのだろうとセネカは思っていたので、迷うことなくガーゴイルに向かっていった。
ガーゴイルは飛んでアッタロスに激突するつもりのようなのでセネカは置き物をすることにした。
二十本の[まち針]を宙に固定して、ガーゴイルの進路を変えさせた。そして、減速せざるを得なかったガーゴイルの首に向かって、渾身の太刀を喰らわせた。
ガギン!
しかし、硬い石でできたガーゴイルに傷を与えることができなかった。セネカの想像の何倍も硬かったのだ。
攻撃をした後、セネカはアッタロスの横に戻っていった。反対側には青火にしっかり対処したレントゥルスもいる。
「おい、アッタロス。なんだコイツは。こんな魔物は見たことねぇぞ」
「⋯⋯討伐班が強い魔物から倒しているのに数が減らねぇと思ってたんだよ。この辺りに出る種類の魔物だったから魔力溜まりで強化されてるんだと思い込んでいたが、お前のせいだったんだな」
「ギニュー」
ガーゴイルは楽し方な声を上げた。
「変な炎と仲間の召喚が能力か。こりゃあ骨が折れるな」
レントゥルスがそう言った時、マイオル達が追いついてきた。
「見ていたな? 後ろの三人はその猫の魔物を頼む。倒せずとも牽制してくれ。俺たちはガーゴイルを倒す」
「⋯⋯分かりました」
鋭い様子で返事をしたのはプラウティアだった。
「レントゥルスさん。あの魔物が亜空間を開く前、うっすらと魔力が先に移動します」
「分かった。その兆候を見失わなければ対処できるな」
「総員、作戦『赤』だ。頼んだぞ」
アッタロスはそう言って、奥に控えていたガイアを見た。作戦『赤』は全員で引きつけて、敵にガイアの全力の魔法をお見舞いする作戦だ。
セネカ達が作戦を立てている間、ガーゴイルはニヤニヤと嫌な笑みを浮かべながらふわふわと浮いていた。小馬鹿にするような動きだ。
しかし、セネカ達がキッと睨みつけると、また「ギギィ」と鳴き、新たな亜空間を開いた。
「セネカ、猫を頼む!」
双頭猫の魔物がもう一匹飛び出してきたので、アッタロスはセネカに任せて、自分はガーゴイルと対峙することにした。
◆
ガイアは魔法を撃つ隙を伺っていた。
魔法の準備は整っており、いつでも発射することができる。
確かに敵は硬そうだったが、ガイアの魔法であれば傷つけられないということはないだろう。
最近までガイアは自信を失っていた。なぜなら、白龍と出会ってしまったからだ。
ガイアは【砲撃魔法】を一日一回しか使えなかった。
そのことに不満を抱き、憤り、葛藤を抱えていた。しかし、威力に疑問を抱いたことはなかった。
発動して倒せない魔物はいなかった。
自分より高威力の魔法を使う人間を見たことがなかった。
だから、いつの間にか自惚れていたのだろう。
発動さえさせてしまえばどんな魔物でも倒せるはずだと、無意識のうちに幻想を抱いてしまったのだろう。
だから、白龍を見た時、ガイアの自信は打ち砕かれた。
そういう存在を知らなかったわけではない。
例えば、ガイアが毎日魔法を打ち込んでいる的は、下級の龍の鱗に特殊な金属加工をした物だ。だから少し考えれば、自分の魔法が通じない魔物が存在すると想像することはできたはずだった。
しかし、ガイアはこの世界の頂点の力にあまりにも早く出会ってしまった。
客観的に自分の力を見る前に。
冷静に分析をする前に。
想像力を働かせる前に。
魔法が一回しか使えないという呪縛からやっと抜け出たところで、ガイアはまた自分に呪いをかけてしまいそうになった。
けれど、そんなガイアを立ち直らせたのはマイオルの姿だった。
龍にあった後のマイオルは打ちひしがれていて、目を背けてしまいたくなるほどだったけれど、そんな状態から這い上がり、すぐに前以上の勢いでひたむきに訓練を始めた。
その姿はガイアの胸を強く打った。
自分はショックを受けたままで良いのだろうか。
目を背けたままで良いのだろうか。
何度も眠りにくい夜を超えた後で、ガイアは心に決めた。
「威力が足りないのなら、強くなれば良い」
そうして、スキルを得てから初めて威力を高める訓練を開始した。おかげで少しずつではあるが、向上が見込めている。
「ガイア!」
アッタロスからの合図が来た。
ガイアは左腕を前に出した。
そして、魔力を変換して強大な魔法の『種』を形成する。
この『種』を全力で圧縮し、魔力がさらに変質するのを待つ。
仲間達は既に避難を始めている。
レントゥルスのスキルで敵の動きは止まっている。
敵がどれほど硬かろうと貫いて見せる。
ガイアはスキルに想いを乗せた。
魔力が臨界状態に達し、高エネルギー状態になったのが分かる。
あとはこの暴力的な魔力を高速で発射するだけだ。
「撃つぞ!!!!」
ガイアはその魔法をガーゴイルに向けて解き放った。
周囲は十分に警戒していたし、遠距離からの攻撃にも気を配っていた。
だがその攻撃は突然やってきた。
これまでの人生で数多の奇襲を受けてきたアッタロスもこの時ばかりは完全に虚をつかれ、居着いてしまった。
だが、彼の横には歴戦の友が出した球体が浮いていた。
その球の特異な性質が彼の命運を分けた。
「魔引!」
レントゥルスは盾球に備わる魔力誘引性能を最大限まで引き上げた。
青い火が盾球に吸い込まれるように引き寄せられていく。そして「ゴウ」と音を立てながら盾球に当たり、火は消えていった。
一拍遅れてアッタロスは身を退き、剣を抜いた。
「レントゥルス、助かった」
「あぁ。喰らっていたら危なかった。盾球にはあまり魔力を込めてなかったが、それでも一撃で壊されそうじゃい」
「全く気配を感じなかった。マイオル、敵はどこだ?」
「一番近くにいる魔物でもかなり距離があります。そこから攻撃が飛んで来たのか、探知に引っかからないのか分かりません。とにかく次撃に備えてください。視野を共有します!」
この時、セネカ達は冷静ではなかった。
方法不明の攻撃に晒されて、共有された【探知】の視野の中で、自分達の近いところしか見ていなかった。
そんな中でガイアだけは冷静に状況を見ていた。
「マイオル! 『扉』があった方向に猛烈な勢いで進んでいく魔物がいるぞ!」
ガイアに言われて、一行は凄まじい速さで移動を進める魔物に目を向けた。
「ガーゴイルの亜種です!」
マイオルが叫んだ。
この時、アッタロスは嫌な予感がした。
その魔物が目的を持って真っ直ぐに進んでいるように見えたからだ。
「防御は俺に任せろ! [豪快]!」
レントゥルスはサブスキルを発動し、盾球を十個まで増やした。もしまた奇襲されても、これなら魔法の誘引が間に合うだろう。
「総員、走れ!」
アッタロスの声が響く。
プラウティアは走りながらポシェットに入っている何種類ものポーションの位置を確認した。これらはキト特製の濃縮ポーションなので、腰に持てる分だけでも様々な事態に対処できるはずだ。
「セネカ、俺の後ろに来い。レントゥルスと一緒に二列目に入るんだ! プラウティア、ガイア! マイオルを守ってくれ!」
全速力で走りながらアッタロスはそう言った。
誰もアッタロスには追いつけなかったけれど、すぐさまセネカとレントゥルスは横に並び、この後の戦闘に備えた。
前列の三人に離されながらも、マイオルは必死に走り、アッタロスに決定的な情報を伝えた。
「アッタロスさん! そのガーゴイルを全力で攻撃してください! 早く!!!!」
先行していたガーゴイルは『扉』があった領域に到着し、膨大な魔力を練って何かしようとしている。
アッタロスは教え子の指示を聞いて、迷うことなく従った。
「[瞬速]! [剣魔]!」
アッタロスは切り札を一つ切った。
[瞬速]により猛烈な速度になった身体からさらに速く魔法が放たれる。
その魔法は光り輝き、剣のような形をしていた。
まるで空気を切り裂くように剣魔は飛び、精神を集中しようとしていたガーゴイルを邪魔することに成功した。
「ギギィ!」
ガーゴイルは悔しそうな声を上げた。
もう少し時間があれば、目論見を完遂できたからだ。
しかし、最低限の目的は達成した。
全員が【探知】の視野を見ていた。
少し前まで巨大な『扉』があった場所に拳大の圧縮された魔力が浮かんでくる。
その魔力は意思を持ったかのように乱回転し、そして、小さな亜空間を発生させた。
「ギギキィィィィ!!!」
その石像の悪魔は嘲笑うような声をあげて、亜空間から流れてくる濃密な魔力をその身に浴びた。
◆
小さな亜空間が発生するのを目にした瞬間、アッタロスはガーゴイルに斬りかかった。
小さい亜空間だとは言ってもそばに居る魔物が力を得て守護者化する恐れがあるからだ。
ガーゴイルは背中に生えたコウモリのような羽を巧みに使い、アッタロスの攻撃をひらりと避けた。そして己の権能を発揮して亜空間を開き、彼方から青い火を召喚した。
アッタロスは危機を察知していたので、すぐに距離を取り、追いかけてきたセネカとレントゥルスの前に立った。
「キキィッ」
癇に障るような鳴き声をあげて、ガーゴイルは別の亜空間を開いた。
亜空間がアッタロスの半身ほどの大きさになったかと思うと、一匹の獣が飛び出し、亜空間はまた閉じてしまった。
「こいつ、亜空間を自由に開けるのか?」
飛び出してきた獣がアッタロスを襲う。
体躯は猫のようだが、頭は二つあり、醜悪な顔をしている。
「こんな魔物は知らねぇぞ!」
双頭の猫がアッタロスに噛みつこうとした時、ガーゴイルも動きを見せていた。その魔物は再度亜空間から青火を召喚しながらアッタロスに飛びかかった。
三方向からの攻撃を受けてしまっては流石のアッタロスもひとたまりもない。だから、セネカは全力で飛び出した。
火の方はレントゥルスがなんとかするのだろうとセネカは思っていたので、迷うことなくガーゴイルに向かっていった。
ガーゴイルは飛んでアッタロスに激突するつもりのようなのでセネカは置き物をすることにした。
二十本の[まち針]を宙に固定して、ガーゴイルの進路を変えさせた。そして、減速せざるを得なかったガーゴイルの首に向かって、渾身の太刀を喰らわせた。
ガギン!
しかし、硬い石でできたガーゴイルに傷を与えることができなかった。セネカの想像の何倍も硬かったのだ。
攻撃をした後、セネカはアッタロスの横に戻っていった。反対側には青火にしっかり対処したレントゥルスもいる。
「おい、アッタロス。なんだコイツは。こんな魔物は見たことねぇぞ」
「⋯⋯討伐班が強い魔物から倒しているのに数が減らねぇと思ってたんだよ。この辺りに出る種類の魔物だったから魔力溜まりで強化されてるんだと思い込んでいたが、お前のせいだったんだな」
「ギニュー」
ガーゴイルは楽し方な声を上げた。
「変な炎と仲間の召喚が能力か。こりゃあ骨が折れるな」
レントゥルスがそう言った時、マイオル達が追いついてきた。
「見ていたな? 後ろの三人はその猫の魔物を頼む。倒せずとも牽制してくれ。俺たちはガーゴイルを倒す」
「⋯⋯分かりました」
鋭い様子で返事をしたのはプラウティアだった。
「レントゥルスさん。あの魔物が亜空間を開く前、うっすらと魔力が先に移動します」
「分かった。その兆候を見失わなければ対処できるな」
「総員、作戦『赤』だ。頼んだぞ」
アッタロスはそう言って、奥に控えていたガイアを見た。作戦『赤』は全員で引きつけて、敵にガイアの全力の魔法をお見舞いする作戦だ。
セネカ達が作戦を立てている間、ガーゴイルはニヤニヤと嫌な笑みを浮かべながらふわふわと浮いていた。小馬鹿にするような動きだ。
しかし、セネカ達がキッと睨みつけると、また「ギギィ」と鳴き、新たな亜空間を開いた。
「セネカ、猫を頼む!」
双頭猫の魔物がもう一匹飛び出してきたので、アッタロスはセネカに任せて、自分はガーゴイルと対峙することにした。
◆
ガイアは魔法を撃つ隙を伺っていた。
魔法の準備は整っており、いつでも発射することができる。
確かに敵は硬そうだったが、ガイアの魔法であれば傷つけられないということはないだろう。
最近までガイアは自信を失っていた。なぜなら、白龍と出会ってしまったからだ。
ガイアは【砲撃魔法】を一日一回しか使えなかった。
そのことに不満を抱き、憤り、葛藤を抱えていた。しかし、威力に疑問を抱いたことはなかった。
発動して倒せない魔物はいなかった。
自分より高威力の魔法を使う人間を見たことがなかった。
だから、いつの間にか自惚れていたのだろう。
発動さえさせてしまえばどんな魔物でも倒せるはずだと、無意識のうちに幻想を抱いてしまったのだろう。
だから、白龍を見た時、ガイアの自信は打ち砕かれた。
そういう存在を知らなかったわけではない。
例えば、ガイアが毎日魔法を打ち込んでいる的は、下級の龍の鱗に特殊な金属加工をした物だ。だから少し考えれば、自分の魔法が通じない魔物が存在すると想像することはできたはずだった。
しかし、ガイアはこの世界の頂点の力にあまりにも早く出会ってしまった。
客観的に自分の力を見る前に。
冷静に分析をする前に。
想像力を働かせる前に。
魔法が一回しか使えないという呪縛からやっと抜け出たところで、ガイアはまた自分に呪いをかけてしまいそうになった。
けれど、そんなガイアを立ち直らせたのはマイオルの姿だった。
龍にあった後のマイオルは打ちひしがれていて、目を背けてしまいたくなるほどだったけれど、そんな状態から這い上がり、すぐに前以上の勢いでひたむきに訓練を始めた。
その姿はガイアの胸を強く打った。
自分はショックを受けたままで良いのだろうか。
目を背けたままで良いのだろうか。
何度も眠りにくい夜を超えた後で、ガイアは心に決めた。
「威力が足りないのなら、強くなれば良い」
そうして、スキルを得てから初めて威力を高める訓練を開始した。おかげで少しずつではあるが、向上が見込めている。
「ガイア!」
アッタロスからの合図が来た。
ガイアは左腕を前に出した。
そして、魔力を変換して強大な魔法の『種』を形成する。
この『種』を全力で圧縮し、魔力がさらに変質するのを待つ。
仲間達は既に避難を始めている。
レントゥルスのスキルで敵の動きは止まっている。
敵がどれほど硬かろうと貫いて見せる。
ガイアはスキルに想いを乗せた。
魔力が臨界状態に達し、高エネルギー状態になったのが分かる。
あとはこの暴力的な魔力を高速で発射するだけだ。
「撃つぞ!!!!」
ガイアはその魔法をガーゴイルに向けて解き放った。
20
お気に入りに追加
600
あなたにおすすめの小説
ハイエルフの幼女は異世界をまったりと過ごしていく ~それを助ける過保護な転移者~
まぁ
ファンタジー
事故で亡くなった日本人、黒野大河はクロノとして異世界転移するはめに。
よし、神様からチートの力をもらって、無双だ!!!
ではなく、神様の世界で厳しい修行の末に力を手に入れやっとのことで異世界転移。
目的もない異世界生活だがすぐにハイエルフの幼女とであう。
なぜか、その子が気になり世話をすることに。
神様と修行した力でこっそり無双、もらった力で快適生活を。
邪神あり勇者あり冒険者あり迷宮もありの世界を幼女とポチ(犬?)で駆け抜けます。
PS
2/12 1章を書き上げました。あとは手直しをして終わりです。
とりあえず、この1章でメインストーリーはほぼ8割終わる予定です。
伸ばそうと思えば、5割程度終了といったとこでしょうか。
2章からはまったりと?、自由に異世界を生活していきます。
以前書いたことのある話で戦闘が面白かったと感想をもらいましたので、
1章最後は戦闘を長めに書いてみました。
最強パーティーのリーダーは一般人の僕
薄明
ファンタジー
ダンジョン配信者。
それは、世界に突如現れたダンジョンの中にいる凶悪なモンスターと戦う様子や攻略する様子などを生配信する探索者達のことだ。
死と隣り合わせで、危険が危ないダンジョンだが、モンスターを倒すことで手に入る品々は、難しいダンジョンに潜れば潜るほど珍しいものが手に入る。
そんな配信者に憧れを持った、三神《みかみ》詩音《しおん》は、幼なじみと共に、世界に名を轟かせることが夢だった。
だが、自分だけは戦闘能力において足でまとい……いや、そもそも探索者に向いていなかった。
はっきりと自分と幼なじみ達との実力差が現れていた。
「僕は向いてないみたいだから、ダンジョン配信は辞めて、個人で好きに演奏配信とかするよ。僕の代わりに頑張って……」
そうみんなに告げるが、みんなは笑った。
「シオンが弱いからって、なんで仲間はずれにしないといけないんだ?」
「そうですよ!私たちがシオンさんの分まで頑張ればいいだけじゃないですか!」
「シオンがいないと僕達も寂しいよ」
「しっかりしなさいシオン。みんなの夢なんだから、諦めるなんて言わないで」
「みんな………ありがとう!!」
泣きながら何度も感謝の言葉を伝える。
「よしっ、じゃあお前リーダーな」
「はっ?」
感動からつかの間、パーティーのリーダーになった詩音。
あれよあれよという間に、強すぎる幼なじみ達の手により、高校生にして世界トップクラスの探索者パーティーと呼ばれるようになったのだった。
初めまして。薄明です。
読み専でしたが、書くことに挑戦してみようと思いました。
よろしくお願いします🙏
異世界でチート能力貰えるそうなので、のんびり牧場生活(+α)でも楽しみます
ユーリ
ファンタジー
仕事帰り。毎日のように続く多忙ぶりにフラフラしていたら突然訪れる衝撃。
何が起こったのか分からないうちに意識を失くし、聞き覚えのない声に起こされた。
生命を司るという女神に、自分が死んだことを聞かされ、別の世界での過ごし方を聞かれ、それに答える
そして気がつけば、広大な牧場を経営していた
※不定期更新。1話ずつ完成したら更新して行きます。
7/5誤字脱字確認中。気づいた箇所あればお知らせください。
5/11 お気に入り登録100人!ありがとうございます!
8/1 お気に入り登録200人!ありがとうございます!
異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜
ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった!
謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。
教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。
勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。
元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。
力を持っていても順応できるかは話が別だった。
クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。
※ご注意※
初投稿、試作、マイペース進行となります。
作品名は今後改題する可能性があります。
世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。
旅に出るまで(序章)がすごく長いです。
他サイトでも同作を投稿しています。
更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。
異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。
社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します
湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。
そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。
しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。
そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。
この死亡は神様の手違いによるものだった!?
神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。
せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!!
※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
家の猫がポーションとってきた。
熊ごろう
ファンタジー
テーブルに置かれた小さな瓶、それにソファーでくつろぐ飼い猫のクロ。それらを前にして俺は頭を抱えていた。
ある日どこからかクロが咥えて持ってきた瓶……その正体がポーションだったのだ。
瓶の処理はさておいて、俺は瓶の出所を探るため出掛けたクロの跡を追うが……ついた先は自宅の庭にある納屋だった。 やったね、自宅のお庭にダンジョン出来たよ!? どういうことなの。
始めはクロと一緒にダラダラとダンジョンに潜っていた俺だが、ある事を切っ掛けに本気でダンジョンの攻略を決意することに……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる