星の降る夜に抱きしめて

愛翔と優里亜

3 side 愛翔

　夕食後、部屋で勉強しているとノック音がした。

「何？」

「愛翔、いいか？」

　父さんの声に母さんが、何が言ったんだろうと思った。

　本当にあの夫婦は、なんでも話すんだよな。

　

「どうぞ。」

　ドアを開けて入ってきた父さんにとりあえずベッドに座ってもらった。

「なんか話？宿題、あと1ページで終わるから、ちょっとだけ待ってて。」

「わかった。待ってるよ。」

　俺のシャープペンを動かす音だけが響く部屋の中で、父さんの気配がするだけで、安心する。

　基本、俺は父さんが好きで、父さんも俺を大好きと言葉と態度で示してくれる両思い。
もちろん不純な方じゃなく家族愛的な。

　それに、ちょっと面倒な時もあって、無視すると父さんは、更にしつこく俺のところに来るから、最初から相手をした方がいい事は、幼い頃からわかっている。

　ノートを片付けて、父さんと向き合うと、父さんが口を開いた。

「愛翔、高校で派手なことしているんだってな。」

「優里亜から聞いた？」

「まあな。この間、俺が話したせいか？」

　俺は頷く事で返事をする。

　きっかけは、理科の授業で遺伝について勉強した事。
父さんはA型、母さんはB型、雄太と佳菜美はA型で、俺だけO型。
普通なら、AOとBOの可能性があるから俺がO型でもおかしくない。
ただ、たまたまうちのじいちゃんとばあちゃんが両方ともA型って知っていたから、おかしい事に気付いただけで…

　それでも受験までは、父さんと同じ長谷高校に受かりたくて、必死に勉強して半分忘れてた。

　合格して書類を提出する時に俺の戸籍に父親の名前がなくて、父さんの養子になっている事を確認した。
母さんは、母さんだったから、父さんと結婚して養子縁組したらしい。

　それでも母さんには、聞けなくてどうしていいか分からずにいた時に父さんから、合格祝いに2人でご飯を食べに行こうと誘われて、本当の父親と母さんの事を父さんに教えてもらった。

「あの時も俺は言ったよな。
俺の血が一滴も入ってなくても、愛翔は俺の子で、雄太や佳菜美より大事だって。」

「うん。父さんの気持ちは疑っていないよ。母さんだって、雄太や佳菜美、それに優里亜も区別してない。
たださ、俺の中には執着心の強い実の父親がいそうで、怖いんだ。
だから、誰にも本気になっちゃいけないんじゃないかって…」

　溢れてきた涙を止められずにいると父さんが立ち上がって、座ったままの俺の頭が自分の胸のあたりに来るように抱きしめてくれた。

「ごめんな。愛翔はまだ15だもんな。いきなりあんな話をされたら、どうしていいかわかんないよな。
だがな。ひとつだけ忘れるな。
お前の父親は、俺だ。
1歳から、良いこと悪いことを教えて育てたのが、俺である以上お前の考え方も性格も俺と似ているんだよ。
親子が似るのは、遺伝子よりも環境だと思う。　
だから愛翔は、大丈夫だ。」

　父さんの言葉に心の中が、少し軽くなったような気がした。