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セリーナの休日

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王太子妃になり、忙しい毎日を過ごしていたある日、突然フレデリック様が 

「ジョシュア様から明日、休日を勝ち取った!」

と私の部屋に入って来た。

「それで、何かする予定ですか?」
「セリーナと出かけたい。」
「どこへ?」
「えっと…」
「遠出するには、警備の準備が間に合わないですね。」
「いや、城下でも…」
「お忍びですか。ところでフレデリック様は休日でしょうけれど、私は予定が入っていますよ。」

私の応えにフレデリック様ががっかりしている。
結婚してから、だいぶ経つが、少し幼くなったと言うか甘えるようになったと言うのか…

「そうですね。私の予定は午前中に済みますから、そのあと一緒に出かけましょう。」
「ああ。」

フレデリック様がしっぽを振っている子犬のように見えてきて、この国の行く末に少し心配になる。まあ、ジョシュア様がしっかり手綱を握っているから、大丈夫だろうけど。

翌日、午前中の公務を片付けるとフレデリック様が、商人のような服装で待っていた。
私が用意してあった商家の女将さんのような服にエプロンをつけるとフレデリック様と城下へと出かけた。

いつもは、仕事で商人の振りをして視察に行くこともあるが、今日は2人で休日を楽しむ。
屋台で串肉を食べたり、露店を見て回ったり…
途中の露店できれいな髪飾りを見ていると

「旦那!奥さんが欲しいみたいですよ。買わなきゃだめっすよ。」

店主に言われてフレデリック様が横から覗き込む。

「どれがいい?」
「緑の石が付いた銀細工のが、きれいだなって。」
「じゃあ、それを貰おう。」
「まいどあり。奥さん、いい旦那で良かったな。」
「ええ。幸せなのよ。」

髪飾りをつけてもらい、手を繋いで街中を歩く。

「しばらく一緒に出かけられなくなるから、今日は良かったわ。」
「どうしてだ?」
「今日の午前中の公務って侍医の診察だったの。」
「なぜそれが公務になるんだ?」
「私の大事な仕事のひとつは、世継ぎを産むことよ。春にはお父様ね。」
「セリーナ!子どもができたのか⁈」

抱き上げられて、びっくりする。

「フレデリック様。危ないです。」
「ごめん。大事にしてくれ。」
「はい。」

翌日、ジョシュア様が登城した途端に、フレデリック様は怒られた。

「なぜ、側近の私より街の人達が先に妃殿下の懐妊を知ってるんですか⁈」
「いや、その…」
「聞きましたよ。街中で、セリーナ!子どもができたのか⁈って叫んで妃殿下を抱き上げて、くるくる回っていたそうですね。普通、側近に報告後、懐妊を広く発表するものじゃないんですか⁈」
「それは…」
「嬉しいのは、わかりますが、あなた方は目立つんです。知っている民もいるんですよ。」
「ジョシュア様、そのくらいで…」
「妃殿下も妃殿下です。このバカに言う場所を選んでください!」

私も巻き添えで一緒に怒られてしまった。

赤ちゃん、早く会いたいわ。あなたのお父様はもちろん、ジョシュア様も楽しみにしているみたいだからね。





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