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 朝食後、お父様の書斎に行くと机の上には書類が山と積まれいた。

「お父様?」
「シャーロット。昨日の話の続きだが、ディランが資料を作ってくれたよ。」
「それでディランは?」
「いま、領内の視察に行っている。その間に候補を絞っておくよう、宿題を出された。」

 昨日あれからこれだけの資料を作り、今日は朝から仕事をこなしているなんて、ディランは寝ている暇あるのかしらと考える。
 が、それより視察から帰るまでに絞らないとまた何を言われるかわからないので、親子で宿題に取り組むことにした。
 冷静に考えれば、執事に怒られるからとせっせと動くって雇い主として、どうかってことなんだろうけれど。

 昨日、サラッと言われた各候補のメリットデメリットや資産状況、交友関係、恋愛事情など一人ひとり詳しくレポートされている。これだけの情報を辺境伯の執事がなぜ持っている⁈
 ディランが怖い…

 お父様と相談しながら『絶対なし』『妥協可』『候補』の3種類に仕分けをしていく。

 結果『候補』が王太子とガードナー侯爵嫡男、『妥協可』が王都に店を構えるグレッド商会の一人息子、年齢は離れているがクレイン公爵と絞られた。
 候補と言っても条件的に合うというだけで、人となりがわからない。

「王都に住んでいれば、茶会などで合う機会もあるんだろうがな。」
「それだわ、お父様。私、王都に行って候補の方々の様子を見てきます。」
「ちょっと、待て…」

 お父様の声は私には聞こえなかった。


 部屋に戻り、早速荷づくりを始める。
数日の滞在予定だから、王都の宿屋に泊まって、一件ずつ訪ねればいいかと考えていると、いきなり頭をグリグリされた。

「痛っ。」

顔を上げると目の前には、目が笑っていない絶対零度の執事サマが立っていた。

「お嬢様は、馬鹿なんですか。馬鹿なんですね。」
「ディラン、痛いわ。」
「何?もっとグリグリが欲しいですか。」
「私が何をしたって言うの。」
「旦那様に聞きました。婚約者候補を見に行く?1人で王都に行ってどうするんですか。グレッド商会でさえ、店には入れても後継に会えるかもわかりません。貴族はそれ以上。さらに王太子が簡単に会えますか。」
「そ、そうですね…」
「そうですね、じゃありません!全くあなたという人はちょっと目を離すと色々やらかしてくれますね。」
「でも、どんな人か…」

ディランは、これでもかというくらいのため息をつくと床に座り、私の荷づくりの続きを始めた。

「あの…ディラン?」
「3日待ってください。王都での滞在準備します。私も一緒に行きますから、大人しく待っていてください。」
「ありがとう。ディラン。」

 ディランに飛びつき、感謝を表すと

「レディの喜び方ではありません。」

と言いながらも、不思議なことになんだか嬉しそうに見えた。
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