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佐々木さんを降した後、理のマンションに向かう。
今日は、理奈もいないので再会してから初めての2人きり。
お腹も空いているので、簡単に作り置きしてあるハンバーグと付け合わせとスープを作る。
「あず、ごめんな。仕事がバタついて入籍ディナー出来なくなって。」
「佐々木さんと今まで以上に仲良くなれたから嬉しいわよ。
ディナーは、これから何回でも行けるし。
理奈も一緒の方が楽しいでしょ?」
ダイニングテーブルにお皿を並べて、ワインを用意すれば、充分楽しいディナーだ。
「あず、今日からよろしく。奥さん。」
「こちらこそ。旦那様。」
2人で顔を見合わせて笑い、乾杯した。
たわいもない話をして笑って、どんなご馳走ディナーより美味しかった。
自分で作ったけど。
食事を終え、2人で片付けて、お風呂に入って、ベッドに入ってもなんとなく理奈がいない時間がもたない。
どれだけ理奈中心で、私たちが生活していたのかを自覚してしまう。
「あず、理奈に電話する?」
「せっかくお母さんと楽しんでいるのに、電話して帰りたくなったとかだと恨まれそうだからやめとく。」
「お義母さん、ライバルができたから、今日こそは!だったもんな。」
「そうよ。『香代ママ』はもう1人のママ主張してた。宝田のお義母様がおばあちゃまって呼ばれているから、祖母ポジで争うより私とママで争う気よ。」
「あずと争っても勝てないのに…」
「そうだといいけど。」
「あずは、いい母親だよ。でも今日は俺だけのあずでいて欲しいな。」
そう言って理は、優しくキスをした。
再会してから、理奈がいることもあり、私たちはキス以上の事をしていない。雰囲気が良くなっても3人で同じベッドに寝ているし、なんとなくタイミングを逸していたのだ。
「今日は、理奈がいない貴重な夜だから。いいか?」
私はこくりと頷いた。
それを合図に理のキスが深くなる。
6年ぶりの甘い夜は、お互いの離れていた時間をすっかり埋めるための大切な儀式のようだった。
どこまでも優しい理に幸せを感じ、離れていた時間はお互いを成長させた部分もあるかもしれないが、あの頃、もっとちゃんと向き合って話をしていたら、この優しい人と離れる必要がなかったと思う。
「ねぇ、理。初めて会った日のこと、覚えている?」
「新入生歓迎会?」
「うん。」
「あずがさ。俺に聞いたんだよな、サークルに入った理由。」
「教育学部じゃない理が、ネイチャークラブにいるのが、不思議だったからね。そしたら、『自分が好きな秘密基地ごっこをできるから』と笑っていたじゃない。
他の人たちが楽しんではいるけど、将来のためにって感じだったのに、理は全力で子どもが参加するイベントも仲間内の活動も楽しんでいていいなって思ったの。
だから、合宿の初日の夜、告白されてすごく嬉しかったのよ。」
「俺は、卒業したら宝田産業で働くことしか選べないから、経済学部に入ったけど、小さい頃から外を駆けずり回って、泥だらけになって遊ぶ子だったんだよ。
せめてサークルは、自分の好きな事をやっていたかった。
あずは、俺の話を聞いて呆れる事もなく『素敵ですね』って言っただろ?あれで惚れた。」
「それだけで?」
「俺の事を宝田の人間として見る奴ばかりだったから、あのサークルのメンバーだけが、俺の事をただの仲間と扱ってくれてたんだ。
それでも本気で楽しんでいる俺を素敵なんて言う人はいなかったんだよ。
あの日、あずがずっと側にいたらいいなって思った。
合宿まで、何度も告白しようとしたけど、なかなか出来なくて吉田先輩がセッティングしてくれたんだ。あれ。」
「そうだったの?」
「あずがいなくなった後、めっちゃ怒られた。『お前に甲斐性がないから、あずみちゃんが愛想つかしたんだろ』って。
実際、そうだったんだよな。ごめんな。」
「色々あったけど、これからはずっと一緒にいるから。」
あの春の日に私たちが出会ったのが、必然だったと思えるようにこれから2人でちゃんと歩いていきたいと思った。
今日は、理奈もいないので再会してから初めての2人きり。
お腹も空いているので、簡単に作り置きしてあるハンバーグと付け合わせとスープを作る。
「あず、ごめんな。仕事がバタついて入籍ディナー出来なくなって。」
「佐々木さんと今まで以上に仲良くなれたから嬉しいわよ。
ディナーは、これから何回でも行けるし。
理奈も一緒の方が楽しいでしょ?」
ダイニングテーブルにお皿を並べて、ワインを用意すれば、充分楽しいディナーだ。
「あず、今日からよろしく。奥さん。」
「こちらこそ。旦那様。」
2人で顔を見合わせて笑い、乾杯した。
たわいもない話をして笑って、どんなご馳走ディナーより美味しかった。
自分で作ったけど。
食事を終え、2人で片付けて、お風呂に入って、ベッドに入ってもなんとなく理奈がいない時間がもたない。
どれだけ理奈中心で、私たちが生活していたのかを自覚してしまう。
「あず、理奈に電話する?」
「せっかくお母さんと楽しんでいるのに、電話して帰りたくなったとかだと恨まれそうだからやめとく。」
「お義母さん、ライバルができたから、今日こそは!だったもんな。」
「そうよ。『香代ママ』はもう1人のママ主張してた。宝田のお義母様がおばあちゃまって呼ばれているから、祖母ポジで争うより私とママで争う気よ。」
「あずと争っても勝てないのに…」
「そうだといいけど。」
「あずは、いい母親だよ。でも今日は俺だけのあずでいて欲しいな。」
そう言って理は、優しくキスをした。
再会してから、理奈がいることもあり、私たちはキス以上の事をしていない。雰囲気が良くなっても3人で同じベッドに寝ているし、なんとなくタイミングを逸していたのだ。
「今日は、理奈がいない貴重な夜だから。いいか?」
私はこくりと頷いた。
それを合図に理のキスが深くなる。
6年ぶりの甘い夜は、お互いの離れていた時間をすっかり埋めるための大切な儀式のようだった。
どこまでも優しい理に幸せを感じ、離れていた時間はお互いを成長させた部分もあるかもしれないが、あの頃、もっとちゃんと向き合って話をしていたら、この優しい人と離れる必要がなかったと思う。
「ねぇ、理。初めて会った日のこと、覚えている?」
「新入生歓迎会?」
「うん。」
「あずがさ。俺に聞いたんだよな、サークルに入った理由。」
「教育学部じゃない理が、ネイチャークラブにいるのが、不思議だったからね。そしたら、『自分が好きな秘密基地ごっこをできるから』と笑っていたじゃない。
他の人たちが楽しんではいるけど、将来のためにって感じだったのに、理は全力で子どもが参加するイベントも仲間内の活動も楽しんでいていいなって思ったの。
だから、合宿の初日の夜、告白されてすごく嬉しかったのよ。」
「俺は、卒業したら宝田産業で働くことしか選べないから、経済学部に入ったけど、小さい頃から外を駆けずり回って、泥だらけになって遊ぶ子だったんだよ。
せめてサークルは、自分の好きな事をやっていたかった。
あずは、俺の話を聞いて呆れる事もなく『素敵ですね』って言っただろ?あれで惚れた。」
「それだけで?」
「俺の事を宝田の人間として見る奴ばかりだったから、あのサークルのメンバーだけが、俺の事をただの仲間と扱ってくれてたんだ。
それでも本気で楽しんでいる俺を素敵なんて言う人はいなかったんだよ。
あの日、あずがずっと側にいたらいいなって思った。
合宿まで、何度も告白しようとしたけど、なかなか出来なくて吉田先輩がセッティングしてくれたんだ。あれ。」
「そうだったの?」
「あずがいなくなった後、めっちゃ怒られた。『お前に甲斐性がないから、あずみちゃんが愛想つかしたんだろ』って。
実際、そうだったんだよな。ごめんな。」
「色々あったけど、これからはずっと一緒にいるから。」
あの春の日に私たちが出会ったのが、必然だったと思えるようにこれから2人でちゃんと歩いていきたいと思った。
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