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 今日は週末、土曜日。
朝イチで迎えに来た理の車は、中層マンションの地下駐車場へと入っていく。

「理は、一人暮らしなのよね?」

「家族タイプの3LDKに一人暮らしだから、理奈の部屋をすぐ作れるよ。」

「3LDKにひとりって…」

「俺のじゃなくて、元々兄貴たちが実家に住む前に買ったものだから。
俺の大学卒業の頃に実家の敷地内に家を建てる話が出て、兄貴と入れ替えで住み始めたんだ。
さてと、理奈。ここがパパのおうちだよ。一度、1階のコンシェルジュに挨拶してから行こうか。」

「こ、コンシェルジュ?」

「警備とサービス兼ねているから、俺がいなくても気楽に来れるように顔を覚えてもらうんだよ。」

 駐車場から1階だけ上がり、エントランスから入ると黒いスーツの男性と女性がいた。

「友野さん、市川さん。」

「宝田様。お帰りなさいませ。」

「俺の妻と娘。これからここに来る事も増えるし、そのうち住む予定だから、よろしくね。」

 細マッチョの男性が友野さん、女性が市川さんと言うらしい。

「あずみです。こっちは娘の理奈です。」

「宝田様、結婚されてたんですか?」

 友野さんが突然現れた私たちにびっくりしている。

「事情があって、籍はまだ入れてないけど、理奈は間違いなく娘だって分かるだろう。」

「そうですね。拓哉君以上にそっくりです。」

 友野さんが、思い切りうなづくので、つい笑ってしまった。

「それじゃ、よろしく。」

「「はい。かしこまりました。」」

 2人に見送られて、エレベーターで10階まで上がる。

 最上階である10階で降りるとフロアにはドアが2つ。
10階は、2部屋しかないらしい。

 理の部屋は手前の1001だった。

 公園がちょうど目の前にあるため、窓の外は見晴らしもいい。

「そこの公園は、遊具もあるから理奈も楽しめるよ。」

「パパと行く!」

「お買い物の後でね。あずと理奈の部屋に必要なものを買いにショッピングモールに行こう。ベッドは、しばらく俺のに3人で寝ればいいけど、枕とかタオルケットとか必要だろう。」

「そうね。ついでにお昼も食べて…」

「あず、とりあえず各部屋のチェックして、夕飯に必要なものとか日用品で必要なものをピックアップしてくれる?
その間、理奈とリビングで遊んでいるから。」

「わかったわ。」

 今日の理は、休みモードの黒いボストン型のメガネ、黒いシャツにチノパン。
理奈を誘ってブロックで遊び始める。

 私は、2人を尻目に部屋の確認を始めた。


3LDKって、こんなに広かったんだと改めて思う。
 
 玄関からすぐリビング、横にアイランドキッチンとダイニングのはずなんだけど、ダイニングテーブルがないので、リビングからそのまま広いスペースになっていて、キッチンという感じ。

 リビングにはソファーとローテーブルとテレビ、ラグマット。あとおもちゃ箱が置いてあるだけ。

 3部屋のうちひとつは寝室で、キングサイズのベッドとウォークインクローゼット。
 あとの2部屋は、何もない。

「理、普段はここに住んでいるんだよね。」

「仕事と兄貴のとこに行く以外は…ほとんど寝るか拓哉と遊ぶくらいしか使ってないな。」

「理奈だけじゃなく、理も生活できるように買い物が必要ね。
私たちの荷物は、そのうち運ぶから差し当たり、理奈の着替えと収納ボックスでいいけど。」

 この人は仕事は出来るけど、本質は学生の頃と変わらないんだなと思った。
 自分の興味のない事には、全く無頓着。

 必要なものをリストアップ出来たので、3人でショッピングモールへ出かけることにした。

 
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