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ここからしばらく、アルヴィン視点になります。

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キャンベル王国、王宮に近いギルフォード公爵邸。
両親は隠居し、領地に住むようになり、ここには王子側近として働く私が、ひとりで生活している…はずなのだが、今朝はなぜかかわいい妹のエミルフェシアが、朝食の席にいる。

「お兄様、今日はアーノルドと視察ですよね。お帰りは遅くなるのかしら?」
「エイミー、なぜここにいる?リチャードは放っておいていいのか?」
「昨夜、来たけどお兄様の帰りが遅かったから私、待てなくて寝ちゃったのよ。リチャードは、まだ眠っているから、乳母が見てるわ。」

乳母まで連れて、赤ん坊と一緒に来たのか。気がつかなかった。

「アーノルドは、放っておいていいのか?」
「さあ?ちゃんとお兄様のところにしばらく帰りますって置き手紙して来たから、いいんじゃないかしら?」

エイミーの応えに私は、頭を抱えた。

「何をやらかしたんだ?」
「アーノルドは、何か言ってなかった?」

昨日、仕事中のアーノルドの様子を思い返してみた。

「いや。昨日は不機嫌と言うか、落ち込んでいる?みたいだったが。」
「一昨日ね。ターナー伯爵が娘の売り込みに来たのよ。リチャード1人じゃ心配だから、側妃を持ったらどうかって。アーノルド、はっきり断らなかったのよ。私だけって言ったのに。だから謝ってくるまで、実家に帰らせていただきます宣言したの。お兄様、私がいたら迷惑かしら?」
「いや、迷惑じゃないが、仕事に支障があるんだよ。執務室が真冬並みに寒くて、しかも仕事のスピードがめちゃくちゃ速くて、何人か倒れる…エイミー、今日視察だよ。」

2人で同じ馬車に乗りたくない。あんだけ昨日の時点で不機嫌だったのが、エイミーの家出で悲哀になるか激怒になるか…
どちらにしてもいいもんじゃない。

朝からどよーんとした気分で、王宮に向かうのだった。


「おはようございます。殿下…」

執務室は、予想通りのブリザードが吹き荒れて、事務官が何人か既に倒れていた。

「アルヴィン、エイミーが…」
「はい。昨夜、置き手紙を残してリチャード連れて来ています。」
「何を怒っているのか、分からなくて…」

私はため息しか出ない。
アーノルドは、エイミーを溺愛しているから、他に目が行かない。それが、逆に自覚ない行動でやきもち妬かれても理解できないのだろう。

「ターナー伯爵が、側妃の話を持って来たそうですね。」
「エイミーがいるのに、話を持って来るなんてと思って、あと忘れていたが、それが?」
「エイミーは、ちゃんと断らないからやきもち妬いてます。」
「そうかぁ。かわいいなぁ。じゃあ、今から迎えに行って…」

真冬が急に春めいてきたように感じるが、外は、いま真夏だよな。

「殿下、今日は視察です。行きますよ。」
「アルヴィン、予定変更で。」
「ダメです。帰りにおみやげ買って迎えに行ってやってください。」
「じゃあ、すぐに行くぞ。」

アーノルドが迎えに行けば、エイミーも王宮に戻るだろう。職場環境改善は、なんとか出来たようで良かったが、あの2人の夫婦喧嘩のたびにブリザードに見舞われる我々に特別手当が欲しいと思う。
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