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「最近、アーノルドとゆっくり話ができるのって授業の時だけのような気がするのだけど…」
「そうだね。マリナ殿もアランもタフだよな。」
「私、最近疲れが取れないわ。」
たぶん私は判断能力が落ちるほど、疲れが溜まっていたんだと思う。
朝、女子寮内で知らない子から声をかけられた。
「あ、あの…エミルフェシア様、王子殿下から手紙を預かっているのですが。」
「ありがとうございます。」
わざわざ手紙なんて珍しいと思いながら開くとタイプ打ちされた文字が目に入る。
『私たち2人の事について、話がある。2人きりで話したいので、授業前に図書館奥の書庫に来て欲しい。 愛しいEへ 』
アーノルドから何の話だろう?
「メラニー、アーノルドに呼ばれたから図書館に行ってくるわね。」
「お嬢様、私も同行します。」
「2人きりで話したいって言うから、いいわ。図書館の入口までは、誰か私に付いてるんでしょ?」
「それは、もちろん。」
「たいした時間かからないと思うから、登校時間に図書館まで荷物持って来てくれればいいわ。」
「かしこまりました。」
図書館は、校舎奥にあるので戻るより届けてもらって、そのまま授業に行こうと制服に着替えて向かう。
まだ早い時間のため、図書館は職員が数人出勤したばかりのようだった。とりあえず近くの職員に声を掛ける。
「おはようございます。書庫に行っても良いかしら。」
「はい、伺っております。どうぞ。」
奥の書庫には、貸出禁止本の棚とそこで調べ物ができるように机や椅子、ソファーが置かれている。
私は、とりあえずソファーに座って待つ事にした。
物の数分で、ドアが開く音がして、閉まると同時にカギを掛ける音がした。
「待たせたな。エイミー。」
そこに立っていたのは、アラン王子だった。
私は自分のミスに気づいた。王子って、この国じゃアラン王子の方を普通指すのに、なぜアーノルドと思い込んでしまったんだろう。
「来てくれて嬉しいよ。」
「あ、あの…」
いきなり座ったまま、抱き竦められて、身動きが取れない。
「エイミー。好きだ。いつも照れてはっきり返事してくれないし、公爵家もなかなか返事をくれないから、実力行使に出ることにしたよ。君が手付きだと分かれば、みんな認めてくれるよ。」
「やだっ。」
私は抵抗するが、そのままソファーに押し倒されてしまった。
額に頬に口に次々とキスをされ、首筋を舐められる。
嫌悪感とぞくっとする感覚にどうしていいのか分からず涙が溢れた。
「やめ、て、やだっ。」
アーノルドの顔が浮かぶ。
助けて…
制服のリボンが解かれ、ボタンが外される。
胸を舐められて、スカートの中に手が入って来た事に絶望を感じた時、急に上にのしかかっていた重みが、なくなった。
「エイミー!」
アーノルドの声がしたような気がして、目を開けると部屋の隅にアラン王子が転がっていて、私を優しく抱きしめてくれているのは、アーノルドだった。
「遅くなってごめん。エイミー。」
アーノルドは辛そうな顔で、私を自分のジャケットで包み、横抱きに抱き上げる。
「アルヴィン!このバカの事は任せた。」
「かしこまりました。殿下。」
いつもならお兄様を兄上と呼んでいるアーノルドが、命令していたのにもお兄様が臣下の礼を取っていることにも気付かない私は震えが止まらず、涙が止まらない。
そんな私を寮ではなく、ギルフォード公爵邸にアーノルドは運んでくれた。
侍女たちにお湯で清められたが、身体の震えが止まらない。ベッドに横になると光景を思い出してしまう。
仕方なくソファーに座ってぼうっとする私の肩を横に座ったアーノルドが抱こうとした瞬間、ビクッとしてしまいアーノルドの手が宙に浮く。
「エイミー、ごめん。」
「アーノルド、ごめんなさい。婚約解消して。私、汚されちゃったもの。あなたの妃になれない…」
「エイミーは、きれいだよ。」
「でも…」
「エイミー、私が触れても大丈夫?」
自信なさげにうなづくと優しく頭を撫でてくれる。
「大丈夫…」
「今日は、ずっとそばにいるから少し眠るかい?」
「いやっ。」
「でもずっと起きているわけにもいかないだろう。」
「横になると思い出しちゃうの。助けて…」
「エイミー。私が上書きしてもいいか?あんな奴を二度と思い出さないように。優しくするから。嫌なら途中で止める。」
「うん…」
アーノルドに優しく抱き上げられ、ベッドに下ろされた。一瞬、恐怖が過ったが、アーノルドに優しくキスをされると安心感が増す。
ひとつずつ上書きされ、自分がきれいにしてもらい、幸せな気持ちになっていくのが嬉しかった。
「そうだね。マリナ殿もアランもタフだよな。」
「私、最近疲れが取れないわ。」
たぶん私は判断能力が落ちるほど、疲れが溜まっていたんだと思う。
朝、女子寮内で知らない子から声をかけられた。
「あ、あの…エミルフェシア様、王子殿下から手紙を預かっているのですが。」
「ありがとうございます。」
わざわざ手紙なんて珍しいと思いながら開くとタイプ打ちされた文字が目に入る。
『私たち2人の事について、話がある。2人きりで話したいので、授業前に図書館奥の書庫に来て欲しい。 愛しいEへ 』
アーノルドから何の話だろう?
「メラニー、アーノルドに呼ばれたから図書館に行ってくるわね。」
「お嬢様、私も同行します。」
「2人きりで話したいって言うから、いいわ。図書館の入口までは、誰か私に付いてるんでしょ?」
「それは、もちろん。」
「たいした時間かからないと思うから、登校時間に図書館まで荷物持って来てくれればいいわ。」
「かしこまりました。」
図書館は、校舎奥にあるので戻るより届けてもらって、そのまま授業に行こうと制服に着替えて向かう。
まだ早い時間のため、図書館は職員が数人出勤したばかりのようだった。とりあえず近くの職員に声を掛ける。
「おはようございます。書庫に行っても良いかしら。」
「はい、伺っております。どうぞ。」
奥の書庫には、貸出禁止本の棚とそこで調べ物ができるように机や椅子、ソファーが置かれている。
私は、とりあえずソファーに座って待つ事にした。
物の数分で、ドアが開く音がして、閉まると同時にカギを掛ける音がした。
「待たせたな。エイミー。」
そこに立っていたのは、アラン王子だった。
私は自分のミスに気づいた。王子って、この国じゃアラン王子の方を普通指すのに、なぜアーノルドと思い込んでしまったんだろう。
「来てくれて嬉しいよ。」
「あ、あの…」
いきなり座ったまま、抱き竦められて、身動きが取れない。
「エイミー。好きだ。いつも照れてはっきり返事してくれないし、公爵家もなかなか返事をくれないから、実力行使に出ることにしたよ。君が手付きだと分かれば、みんな認めてくれるよ。」
「やだっ。」
私は抵抗するが、そのままソファーに押し倒されてしまった。
額に頬に口に次々とキスをされ、首筋を舐められる。
嫌悪感とぞくっとする感覚にどうしていいのか分からず涙が溢れた。
「やめ、て、やだっ。」
アーノルドの顔が浮かぶ。
助けて…
制服のリボンが解かれ、ボタンが外される。
胸を舐められて、スカートの中に手が入って来た事に絶望を感じた時、急に上にのしかかっていた重みが、なくなった。
「エイミー!」
アーノルドの声がしたような気がして、目を開けると部屋の隅にアラン王子が転がっていて、私を優しく抱きしめてくれているのは、アーノルドだった。
「遅くなってごめん。エイミー。」
アーノルドは辛そうな顔で、私を自分のジャケットで包み、横抱きに抱き上げる。
「アルヴィン!このバカの事は任せた。」
「かしこまりました。殿下。」
いつもならお兄様を兄上と呼んでいるアーノルドが、命令していたのにもお兄様が臣下の礼を取っていることにも気付かない私は震えが止まらず、涙が止まらない。
そんな私を寮ではなく、ギルフォード公爵邸にアーノルドは運んでくれた。
侍女たちにお湯で清められたが、身体の震えが止まらない。ベッドに横になると光景を思い出してしまう。
仕方なくソファーに座ってぼうっとする私の肩を横に座ったアーノルドが抱こうとした瞬間、ビクッとしてしまいアーノルドの手が宙に浮く。
「エイミー、ごめん。」
「アーノルド、ごめんなさい。婚約解消して。私、汚されちゃったもの。あなたの妃になれない…」
「エイミーは、きれいだよ。」
「でも…」
「エイミー、私が触れても大丈夫?」
自信なさげにうなづくと優しく頭を撫でてくれる。
「大丈夫…」
「今日は、ずっとそばにいるから少し眠るかい?」
「いやっ。」
「でもずっと起きているわけにもいかないだろう。」
「横になると思い出しちゃうの。助けて…」
「エイミー。私が上書きしてもいいか?あんな奴を二度と思い出さないように。優しくするから。嫌なら途中で止める。」
「うん…」
アーノルドに優しく抱き上げられ、ベッドに下ろされた。一瞬、恐怖が過ったが、アーノルドに優しくキスをされると安心感が増す。
ひとつずつ上書きされ、自分がきれいにしてもらい、幸せな気持ちになっていくのが嬉しかった。
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