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「何?どういうこと…」

翌朝、教室に着いた私が見たものはアーノルドと仲良さげに話す聖女様だった。
聖女様とアラン王子は、この授業を取っていないから会うはずがないと思っていたのに聖女様がアラン王子と離れているのは信じられなかったし、何よりアーノルドがにこやかに相手をしている事にずきりと心が痛んだ。

「エイミー、おはよう。」

私に気付いたアーノルドが、聖女様に断って、こちらに来る。

「アーノルド、あの…」
「ごめん。昨日のダンスで組んだせいで勘違いされたみたいなんだ。朝から寮に押しかけられた。」
「でも楽しそうね。」
「エイミーが嫌ならはっきり言うけど、私の顔が楽しそうに見えた?」
「ん…」
「いい加減、私の対外用の顔に慣れて欲しいな。それでも嫌ならはっきりさせるけど。」

そうだった。この人は留学している隣国の王子だから波風立てない立ち回りをするのが、当たり前だった。特に神殿勢力は、王家に次ぐものだし。

「アーノルドさまぁ。私を置いて行かないでくださぁい。」
「すまない。昨日、倒れたエイミーが心配でね。なにしろ彼女は、身内(大切な未来の奥さん)だから。」
「優しいんですね。ただの従妹なのに。」

聖女様が甘ったるい笑顔で近寄って来る。

「アーノルド、わかったわ。昨日の約束守ってね。」
「アルヴィン兄上にはフォロー頼んだ。」

そうよ。こんなぶりぶりな聖女様になんかアーノルドは、惹かれないんだから…
私は、聖女様に負けない。

「聖女様、先日までアラン殿下にべったりだったのに、アーノルドにまで手を出さないでください。」
「あっらぁ、悪役を演じる気になったの?」
「悪役?私は聖女様がアラン殿下を放って何をしているのかと思いましたのよ。」
「私はアーノルド様が運命の相手ってわかったんだから、アラン様はあなたにあげるわ。アラン様、あなたがお気に入りみたいだし。」

いらないわよ。

「聖女様、授業が始まるのでご自分の教室に戻られたらどうですか。」
「あなたもそうでしょ?」
「私はこの授業を取っていますから。」
「あら、そうなの。アーノルドさまぁ。ランチ、一緒に行きましょうねー。」

聖女様が去って、やっと静かになる。

「エイミー。何だろうね、あれ。」
「アーノルド、気に入られちゃったみたいね。」
「やはり公表するか。」
「多分、意味ないと思う。むしろ運命の相手とか言ってたから、私が婚約者から解放してあげるとか言いそうよ。」
「やめてくれ。エイミーがいないなら、いまこの学園にいないってのに。」
「とりあえず、ランチは聖女様が来る前に逃げる?」
「そうだな。でもランチは?」
「メラニーが届けてくれるって、いまメモが届いたわ。」
「さすが、ギルフォード公爵家の隠密警護だな。…ん⁈それじゃいつもエイミーと2人きりのつもりの時も…」
「基本、アーノルドが強いから、遠巻きに警護してくれているみたい。お兄様も含めて、過度の密着以外は大目に見ているって。顔が赤いけど?」 
「なんだよ。エイミーと2人きりだと思っていたのに…」

自分たちの甘い時間が、晒されていたことにアーノルドは、赤くなりながら、ちょっと悔しそうだ。
仕方ないわよね。王子なのに強いから警護が少ないアーノルドは、いままで思い至らなかったみたいだけど。
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