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久しぶりにあの夢だ。
伯爵の話を聞いたせいか、いつもより周りがよく見える。

まだあたりは薄暗い。いつもキャリーと庭で遊ぶ時に着ている汚しても怒られないワンピースに着替えさせられて、今日は何をする日だったかしら?と寝ぼけた頭で考えていると侍女のジェーンが抱き上げた。マリーが今日休みだとキャリーもいないのかなぁと思っている私は抱かれたまま部屋を出た。

朝なのに遠くで騒いでいるような声がする。

移動したお母様の部屋には侍女たちと私の服を着たキャリーがお母様と一緒にいた。キャリーは涙目になっていたが、泣くのを必死に我慢しているようでお母様が「巻き込んで、ごめんなさい。」と抱きしめている。ジェーンが私をおろすとお母様は私にペンダントをかけ、ぎゅーっと抱きしめてすぐに離される。

私はなんだか悲しくてさみしくて涙がでてきた。

「エリーを頼みます。時間がない。急いで。」

お母様がそう言うとキャリーを一度抱きしめた父さんが私を抱き上げ、部屋の壁にある本棚の真ん中にある隠し通路に入ろうとする。

私はお母様に

「いっしょにいこうよ。」

父さんの腕から降りようともがきながら、お母様に手を伸ばすがお母様は毅然とした態度を変えない。

「エリー。あなたはここには必要ありません。いきなさい。」

そう行って隠し通路の入口を閉じられてしまった。
まだ通路を移動し始めてすぐにあの部屋の方から悲鳴や怒号が聞こえた。私と父さんが通路を抜けて後ろを見ると建物は火に包まれていた。

目が覚めた。あの日を思い出していた。多分、私はショックで熱を出し記憶とお母様譲りの金髪を失ったのだろう。
そして気付く。キャリーは乳母だったマリーの子で私と同じ年だった。私は父さんと母さんの子どもを替玉にして生き延びた。もしかしたら、2人は私のせいで生命を落とした?
このまま、平和に過ごすのもいいかもしれないし、父さんたちも望んでくれていたかもしれない。
でも、3人やあの時亡くなったみんなのために私は真実と向き合うべきなんじゃないだろうか。
そしてお母様の「いきなさい」は私に「生きなさい」と言ったような気がしてきた。
私は真実と向き合いエルフェリアてして生きる道を選ぶことを決心した。
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