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最終章

ジェイ

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「あれ?」

 気がつくとルキウス城前で佇んでた。
 さっきまで牢屋に入れられていた筈。
「そ、そっか、ゲームだからやり直し…っ。」
 じゃない、ここはゲームの世界じゃない。

 あの魔法チート王子の言うことは正しかった。

 リシェールだって、俺だけの物じゃないんだ…。

 でも……。


 ルキウス城に入る。
 玉座の間にはゲームだといっつもリシェールが居た。
 人気が無かったから、そっと中を窺う。

 そこにはリシェールが居た。
 泣いている!?

 俺はすぐに駆け寄って、リシェールを抱きしめる。
「……ジェイ!?」
 ああ、そうだよ。
 リシェールはこうやって呼んでくれた。
 あのリシェールは俺を知らなかった。

「リシェール、泣かないで。どうしたの?」
「わ、私は……責務を放棄して…辛い事を全部柚希さんに押し付けてしまった…。」

 柚希って言うのがあの子かなぁ?
 成程、転生では無かったんだね。

「リシェールは何も悪くないよ。ね、何かしちゃったなら、全部俺が被ってあげるよ?」
「そうではなく、もう謝ることも出来ないのだ…せめて一言…。」
 紫の瞳から流れる涙が綺麗だ…。
「あの子は気にしてないと思うよ?大丈夫、落ち着いて、ね?」
 リシェールの両肩を掴んで、唇にキス。
 舌を入れて、リシェールのそれを擦り立てる。
「ん…っ!」
 すぐに唇を放す。
「じ…ジェイ…何故このような…っ!」
 ああ…この反応だ。
 顔を真っ赤にしてわなわなしながらも気高い。

 リシェールは泣くのを止めてくれた。
「リシェールは俺を救ってくれたんだよ。何にも無かったスッカスカの俺にたくさん言葉をくれたんだ。自分らしいままでいい、そのままの俺が好きって。」
 リシェールは何の事だろうと思案顔になりながらも、俺の言葉に耳を傾けている。
「だからね、リシェールに俺は救われたから、今度は俺がリシェールを助けたいんだ。」
「そ、そんな…私にそのような価値な…んっぅ!」
 言葉を遮るように唇を封じる。
 舌で口内の唾液をかき混ぜるようにしてリシェールの口内を蹂躙する。
「んっ…ふぅ!」
 舌で舌を舐め取ってから唇を解放する。
「価値が無いなんて言わないでリシェール!リシェールは俺にとっての大切な存在。他なんか目に入らない。リシェールが居てくれるだけで、俺は生きていけるんだ。」

 身体の力を抜くリシェール。
「……ジェイ…貴方はこのような私でも、愛してくれるのですか?」

 その言葉が聞けた時確信した…ああ『本当のリシェールにようやく逢えた』って。
 俺を救う言葉をくれたリシェールは君なんだって。
 勿論ゲームの世界じゃなく、生きている『俺だけの』リシェールに。


 リシェールは頬を染めて『俺のためだけの笑顔』を浮かべてくれた。




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