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7 お化け屋敷と空中ブランコ

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 それを聞いた久遠は、安心したように、胸に手をあて目をつむり、肩を落とした。
 一体久遠になにがあったのか。ますます気になってきたが、みんなの前でいうことを、断固として拒否している久遠を見て、乙葉は二人に、なにがあったのか聞くことを、すんなりとあきらめた。柚子も、なにも言わないところを見るかぎり、乙葉とおなじなのだろう。
「ねえ、はやく家に帰ろー」
 これまでなにも言わずに、空中でのんきに浮いていたルーカスが、はやく夕飯を食べたいのか、その場の空気をいいようにこわし、みんなを急かして言った。
「そうね、私、お腹が減ったわ」
 柚子も同調した。
「まだ話は終わってないんだが」
 京一は、ムッとした顔をしながら、イライラしているように見えた。
「もう、かたいこと言わないでよ。すこしくらいなら、遊んだって別に、かまわないでしょう? 鍵探しばかりしていたら、ストレスがたまっちゃうもの」
 もう完全にバレているとわかり、とうとう開き直った乙葉が、堂々とそう言った。
「そうそう! そうだよ」
 ルーカスが頷きながら言った。
「僕たち、一回ずつしか、空中ブランコに乗ってないんだよ。まあ、僕は二回だけど……でも、あとはずっと鍵探しだから」
「一回ならいいと思うなよ。そんなの鍵探しが終わったあとに、いくらでもできるんだから」
 もう京一は、完全に怒っていた。
「それは、たしかにそうだけど……」
 怒っている京一を前に、乙葉は言いよどんだ。
「ちゃんと鍵探しに集中しろよ」
 京一は真剣だ。
 乙葉はどうしようか迷ったが、最終的に言い返す言葉も見つからず、うつむきながら、
「——ごめん」と言った。
 そして、柚子とルーカスの二人も、乙葉につられて、反省してしゅんとしていた。
 そんな三人を見た京一は、長いため息をもらし、
「俺たちには、時間がないんだ。一度だけは見逃してやるけど、次はないと思えよ」と、きびしく言った。
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