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7 お化け屋敷と空中ブランコ

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「あきらめずに、最後までがんばれよ」
 吐き捨てるように、京一が言った。
 その言葉で、久遠はムッとした顔をすると、
「だって、僕なんか、がんばったところで、結局なにも変われないんですよ。だから、なにもしないでいなくなった方が、マシだと思って」と、ブツブツ言った。
 そう、なんでもできる、優等生みたいな京一とはちがう。京一みたいに強くはなれない。
「お前は、バカなのか?」
 はっきりと京一が言った。
「がんばったところでなにも変わらないなんて、誰がそんなこと決めたんだよ。俺はそうは思わない。がんばったらがんばった分だけ、ちゃんと成果が出る。お前だって、本当はわかっているはずだ。それなのにできないと決めつけて、楽な方にいこうとしている。ちがうか?」
 京一が、真剣な目をして尋ねた。
「そ、それは……」
 久遠は一瞬たじろいだ。
 しかし、すぐに、
「僕は、相沢くんとはちがうんです! 相沢くんは、できのわるい僕とちがって、すごく強いじゃないですか。だから、相沢くんはそんなことが言えるんだ」と、声を張り上げながら言った。
 すると二人の間に、沈黙が流れた。
 なんだかとても気まずい。けれど、本当のことを言っただけだ。言ったことに対して、なにも後悔はしていない。
 久遠が沈黙を守っていると、京一が先に、口を開いた。
「——お前は、俺のことを、できがいいやつだとか思っているみたいだけど、俺は別に、自分のことをできがいいだなんて思わない。思わないからずっと努力する。努力をやめたりなんかしない。生きているかぎり、がんばりつづける」
「生きているかぎり……?」
 久遠は、真剣に京一の顔を見ながら、聞きかえした。
「そうだ。俺は剣道で、上を目指す。だからそのためには、どんな時でも、努力をしつづけると決めたんだ。あきらめたら、そこで終わりだからな」
 たんたんと京一が言った。
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