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7 お化け屋敷と空中ブランコ

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「このお化け屋敷の中に、まさかこんなに長い階段があるなんて、思いませんでしたよ」
 階段を見上げた久遠が、おどろいて言った。
「この屋敷、意外と広いからな」
 そう言うと、京一はすぐに、階段をのぼりはじめた。
 これはまた、のぼるのが大変そうだ。そう思いながら、京一のあとに続いて、久遠も階段をのぼっていった。
 そのあと、二人は苦労しながらも、螺旋らせん階段をのぼりきった。
「やっと、ついた」
 久遠がすっかり息を切らしながら、そう言った。
「これがその橋ですね」
 前にある橋を見て、久遠がいうと、京一はうなずいた。
 木製のその橋は、太鼓のどうのように、上へ丸く反った太鼓橋になっていた。欄干の色は赤色で、幅は広く、長さは五メートルほどあり、下からの高さは、なんと天井近くまである橋だった。その下には、京一の言ったとおり水が流れていて、久遠の耳に、心地よいせせらぎが聞こえてきた。
「まるで、本当に川があるみたいですね」
 感心しながら久遠が言った。
 その時、京一はなにかを思い出したような顔をすると、
「そうだ、久遠。先に言っておくけど、ここを渡る時は、」と言った。
「はい?」
 久遠は、京一のいう気をつけろの意味が、いまいちよくわかっていなかったが、橋の上は、きっと滑りやすくなっているのだろうと、勝手に解釈をすることにした。
 京一は、久遠がそう考えている間にも、すでに先を進んでいた。それに気づいた久遠は、あとから慎重に、橋の上を歩いた。
 少したって、京一は突然、無言でその場をとんだ。
 久遠は、京一のその、謎の行動を見て立ち止まると、
「え? 京一くん、どうしたんですか?」と、うろたえながら言った。
 京一は後ろを振りかえり、
「もうすぐ久遠のところにもくるぞ、用心しろ」と、真剣な声で言った。
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