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7 お化け屋敷と空中ブランコ

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 久遠が頷きながら言った。
「それじゃあ、先を急ぎましょうか」
 久遠は京一に、なにかを考える隙を与えないように、ことを急かした。
「ああ」
 京一が返事をした。
 見た感じ、京一はかなり疑っているようだったが、そんなことよりも、鍵探しの方が先決だと思っているのか、それ以上は突っ込んでこなかった。
 それから、二人はさらに、お化け屋敷の奥へと進んでいった。
 京一は鋭い目でにらむように、左右を交互に見て、鍵を探しながら、真剣に歩いているようだった。
 一方、歩くだけで精一杯で、京一ほど余裕がない久遠は、下を中心に見て探していた。
 やがて、いくつもの墓が、ならんで置かれてある場所にたどり着いた。
「ここはもうすでに探してはいるが、念のため、もう一度探そう」
 用心深く京一が言った。
 ついた時点で、なんとなく京一に、そう言われるのではないかと予想してはいたが、いざ墓を目の前にして言われると、久遠の足は、たちまちすくみ上がった。
「ええ……ここを探すんですか?」
 いやそうに久遠が言った。
「当たり前だ」
 そう言うと、立ちすくんでいる久遠をよそに、京一はスタスタと墓の近くにいき、念入りに探しはじめた。
「仕方ないか……」
 あきらめて言うと、久遠もおそるおそる墓に近寄り、鍵を探しはじめた。
 偽物の墓と言っても、石でできていて、姿形は、本物の墓となにも変わりはないように見える。
 その墓石に触ると、ひやっと冷たく、ざらついた感触が、久遠の手に残った。
 暗くて視界がよく見えない中、スマホのライトを照らしながら、久遠はなるべく墓の細かいところまで見ようと、ひざをつき、低い姿勢になって探した。
 入る前から、おびえっ放しの久遠だったが、一度、鍵探しにとりかかると、ここがお化け屋敷だということを忘れ、集中することができた。
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