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5 ドキドキ観覧車

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「は、はい。そうですね」
 そう言うと、久遠はその場に座りこんだ。
「もう、ルーカスが中で、暴れるからいけないのよ」
 柚子が文句を言った。
 しかし、ルーカスは知らん顔をしながら、楽しそうに、空中で浮かんでいる。
「柚子さん、僕なら大丈夫ですよ。ルーカスさんを、あまり責めないであげてください」
 柚子をおさえるように、久遠が言った。
「そんなことじゃ、またつけあがりますよ。いいんですか、久遠さん」
 柚子が言い返した。
「まあ、それもよくはないですが、時間が経てば、この酔いも、じきに覚めると思いますので」
 久遠が言った。
「まったく、甘いなあ。久遠さんてば」
 呆れながら柚子が言った。
「そうだ、聞いてくれ。さっきゴンドラの中で、これを見つけたんだ」
 見つけたばかりの鍵をかかげて、皆に見せながら、京一が言った。
「えっ、鍵⁉︎」
 驚愕しながら柚子が言った。
「そう! 見つかったの」
 よろこびながら乙葉が言った。
 久遠は座りながら、鍵をまじまじと見たあと、
「それが言ってた鍵なんですね。それにしても、たくさんあるんだなあ」と、おどろいたように言った。
「ねえ、はやくその鍵、ためしにいきましょうよ」
 柚子が急かした。
「ちょっと待って。久遠くんが酔ったって言ってるし、もう少し、休憩してからにしましょうよ」
 乙葉が言った。
 するとすかさず、
「いや、僕のことは気にしないで、皆さん先にいってください。もうすこし休憩して、回復したら、僕もあとで向かいますから」と、遠慮がちに久遠が言った。
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