ルーカスと呪われた遊園地（上）

５ ドキドキ観覧車

５１

　乙葉は考えながら、ゆっくりとそう言った。
「ああ、そうだよ」
　ぶっきらぼうに京一が言った。
「へー、そうなの」
　京一の言葉を聞いて、乙葉は少し不機嫌になった。
「お前、なに怒ってるんだよ」
　京一が言った。
「別にー？　怒ってなんかないわよ」
　乙葉はシラを切った。
「いや、やっぱり、怒ってるじゃないか」
　京一が言い返した。
「だから、怒ってないって」
　二人は言い合いになった。
　なぜ苛立っているのか、乙葉自身にもわからなかった。しかし、このままでは雰囲気が悪くなると思い、乙葉はなんとか冷静になろうと、息を深く吐いた。
「それで、なんの話してたっけ？」
　少し落ち着いたところで、あらためて話を切り出した。
「だから、久遠のこと、どう思ってるのかっていう話」
　京一が言った。
「どうって言われても……久遠くんはクラスメイトで、仲の良い友達だし」
　久遠のことを思い出しながら言い、乙葉は下を向いた。
「へー？　どうだかな」
　疑うように、京一はそう言った。
　乙葉は顔をしかめると、
「まあ、京一も言っていたように、私と京一は、ただの幼なじみなんだし？　私と久遠くんがお互いにどう思おうが、京一には関係ないと思いますけどね」と言った。
　一瞬、京一はくやしそうな顔をすると、
「ああ、そうだな。俺が悪かったよ」と、無愛想に言い、乙葉から視線を外した。
　一体なんだというのだろう。京一が人のことをどう思ってるのか聞くなんて、めったにないことだ。乙葉は京一の言動をけげんに思った。