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5 ドキドキ観覧車

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「うーん……でも、なんか現実離れしてて、やっぱりすぐには信じられない」
 口をとがらせながら柚子が言った。
「まあ、それはそうよね」
 乙葉が共感しながら言った。
「でも私、あの子が普通の子じゃなくて、めちゃくちゃ変わった男の子だっていうことは、なんとなくわかったわ」
 納得したように柚子が言った。
「まあ、とりあえず安心して。ルーカスは、私たちの味方だから」
 笑顔で乙葉が言った。
「味方? 味方がいるってことは、この遊園地には、敵もいるってこと?」
 まさか、とでもいうような顔をして、柚子が鋭く聞いた。
「実は、そうなの」
 視線を落として乙葉が言った。
「この遊園地には、バーサークっていう敵もいるの。バーサークは、夜にだけこの遊園地を巡回して、人を見つけるとすぐに殺してしまう、とんでもない殺人鬼よ。だから、夜だけは絶対に出歩かないで」
 さきほどまでの顔とは打って変わって、真剣な表情で乙葉が言った。
「なにそれ、そんなこと言われたら私、急にこわくなってきたわ」
 柚子は焦った様子でそう言うと、突然、顔を曇らせ、
「なにか、本当におそろしいところにきちゃったみたいね……」と言った。
「落ち込んでいても仕方ないわよ。とにかく前向きに、外に出られるようにがんばりましょう」
 そう言うと乙葉は、柚子の肩を、安心させるように何度かポンポンと叩いた。
「うん」
 それで本当に安心したのか、柚子の顔は元の表情にもどった。
 二人はそれから、小屋にもどった。
 すると、なにやらルーカスと久遠の二人が、小屋の中でドタバタと騒がしくしているようだった。
「ルーカスさん! それ、僕のなんですから、返してくださいよー!」
 なにやら、久遠が必死になってうったえながら、ルーカスを追いかけている。
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