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5 ドキドキ観覧車

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「よかった、柚子さんが下に落ちなくて」
 久遠は心底安心したようにいうと、すぐに心配している顔になり、
「あ、ケガはないですか?」と、柚子を見て言った。
「実は小枝にあたって、ひざを少し擦りむいたみたいです」
 柚子が遠慮がちに言った。
 しかしひざを見ると、少しどころか広範囲に赤い血がたれており、ひどい傷になっていた。
 その傷を見た久遠は、みるみる顔を真っ青にして、
「大変じゃないですか! いますぐ手あてをしないと」と、焦りながら言った。
 そして急いで、自分のリュックから救急セットをとり出した。
「いや、そんな、ただの擦り傷ですから」
 久遠の反応が少し大げさだと思った柚子は、おさえるように言った。
「いえ、たかが擦り傷、されど擦り傷ですよ。なめていたらいけません」
 真剣に久遠が言った。
「は、はあ」
 まるで人が変わったようにきびきびしている久遠に、柚子は圧倒されながらも、大人しく手あてを受けることにした。
 それから、柚子は久遠に手ぎわよく手あてをされると、最後に、ひざに大きな絆創膏を貼ってもらった。
「おー、はやい」
 柚子が感激しながら言った。
「これくらい普通ですよ。僕も小さい時は、親によくやってもらっていたので」
 照れながら久遠が言った。
「それにしても、歩けますか? もし歩けないようなら柚子さん、残念ですけど、今回は諦めることにしましょう。そしたら、僕がおぶって下まで連れていきますから、帰りのことは心配しないでください」
「えっ、いや、大丈夫ですよ」
 柚子は本当に大丈夫だということを、久遠にわからせるために、立ち上がって元気に振るまって見せた。
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