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4 妹の決断

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 乙葉とルーカスは、園内にいる京一を、のんびりしながら探していた。今日はくもりで、太陽が出ていない。快適にすごせる天気だ。
「京一、どこだろうねえ」
 ふいにルーカスが言った。
「そうね」
 乙葉がそう返事をした。
 歩いていると、昨夜に見た観覧車が、目の前にあらわれた。
 色とりどりのゴンドラは、相変わらず、止まることなくまわり続けている。
 その観覧車を見て、乙葉はとっさに、ジンクスのことを思い出した。
 そして早速、
「ねえ、ルーカス。この遊園地に、なにか素敵なジンクスなんて、あったりする?」と尋ねた。
「ジンクス?」
 ルーカスが聞きかえした。
「そう。たとえば、この観覧車に乗ったら誰でも幸せになれるとか、男女で乗れば付き合えるとか、そういうの」
 乙葉が言った。
「うーん、どうだったかな」
 あごに人さし指を当て、考えながらルーカスが言った。
 ルーカスが答えるまで、一体どんなジンクスをいわれるのだろうと思い、乙葉は、期待に胸をふくらませながら待った。
 やがて、
「忘れちゃった」と、けろりとしながらルーカスが言った。
「えー、思い出してよー」
 乙葉が、近くで浮いているルーカスの腕をつかんで揺すりながら、そう言った。
「そんなむちゃ言わないでよ」
 そう言うと、ルーカスは、乙葉の手を振りはらった。
「残念だわ。でも、忘れてしまったのなら、仕方ないものね」
 乙葉は口おしそうにした。
「ところで、なんでそんなことが知りたいの?」
 けげんそうにルーカスが聞いた。
「それはもちろん、面白そうだからに決まってるわよ」
 はっきりと乙葉が答えた。
「本当にそれだけ?」
 ルーカスがうたがうように言った。
「それだけよ」
 乙葉は平然と言ったが、ルーカスは、
「なんかあやしいなあ」と言って、目を細めながら、乙葉のことを見た。
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