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4 妹の決断

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「でも、もし今後、考えがかわることがあれば、今日の十八時に、このコンビニの前にきてください。それで十九時までに妹さんがこなければ、行く意思はなかったということで、僕一人でいきたいと思います」
 久遠がそう補足した。
 そんな、柚子がついていかなければ一人でいくなんて、まるで挑戦状を出されたような気分だ。
 しかし、柚子はそんなこと、はなから受け入れられるはずがなく、
「……私は、絶対にいきませんからね」と言った。
「はい。あの、お気を悪くされたのなら謝ります。本当にごめんなさい」
 そのあと、久遠は急に真剣な顔になって、
「でも、これだけはいわせてください。僕は本気です。絶対に、乙葉さんを助けにいこうと思っているので、それだけは、知っておいてください」と言った。
 それを聞いた柚子は、おどろきすぎて、ただ呆然として、久遠を見つめているしかなかった。
「それじゃあ僕、もういきますね」
 そう言うと、久遠は固まってたたずんでいる柚子を置いて、さっさとコンビニから去ってしまった。
 あんな危険な場所に、二人だけでいくなんて、自殺行為にもほどがある。これまで、誰も無事に出てこられた人がいないっていうのに。
 久遠は一体、なにを考えているのだろうか。柚子はつい、久遠の神経をうたがった。
 そして気が重くなりながら、一人、帰り道を歩いた。

                 ♢♢♢
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