ルーカスと呪われた遊園地（上）

４ 妹の決断

２４

　乙葉が説得した。
「ルーカスも帰りたがっていることだし、このとおり、私は京一のおかげで無事なんだから。それに、ルーカスがきてくれたら、わざわざ歩かなくても、飛んで帰れるのよ」
「いや、俺はこいつを倒す」
　京一はかたくなになって、意見を変えようとはしなかった。
　もはや乙葉がなにを言っても、京一は納得してくれないようだ。
「そうだよ、京一。もう帰ろう」
　とうとう痺れをきらしたのか、ルーカスはそう言うと、片方の手で乙葉の手を取り、宙に浮いた。それから続けて、もう片方の手で、強引に京一の腕をつかみ、三人で宙に浮いた。
「うわっ、おい、ルーカス」
　ジタバタしながら京一が言った。
「てことだから、バーサーク、まったねー」
　ルーカスが元気よくそう言った。
「お前、ひきょうだぞ！　俺様のえもの、かえせー！」
　バーサークが地上で、ルーカスに向かってさけんだ。
　満月の下、乙葉は、だんだんと小さくなっていくバーサークを見ながら、ルーカスと京一と一緒に、月の光に照らされながら、空へと浮かんでいった。
　しばらくして、小屋の近くまでくると、ルーカスは二人を地上におろした。
「さあ、バーサークもいないことだし、はやく家に帰って寝よう」
　ルーカスが飛びながら言った。
「そうね。戻りましょう」
　乙葉が言った。
「くそ、もう少しで、あいつと戦えるところだったのに」
　京一がくやしがりながら、そう言った。
　そんな京一を見て、
「もういいかげん、戦いのことなんて忘れなさいよ」と、乙葉が呆れたように言った。
　そのあと三人が、話しながら小屋まで移動していると、
「そう言えば乙葉、足をケガして歩けないんじゃなかったのか？」と、突然、京一が思い出したように言った。
「それが、本当は歩けないほどの痛みじゃなかったんだけど、こわくて、腰が引けちゃってたみたい」