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4 妹の決断

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「おいコラ、邪魔すんな、せっかくいいところだったのに!」
 不満そうにバーサークが言った。
「うるせえっ……こいつを殺すことは俺が許さん」
 押されていた京一は、余力がのこっていたのか、さらに力を出し、バーサークと互角になった。
 二人は鉄の棒とハンマーを、激しく押し合っていた。乙葉はそんな二人を、唖然としながらただ見ていた。
 そしてついに、二つの強力な力が弾き合い、互いに距離を取った。
「乙葉、お前、後ろに下がってろ」
 京一が言った。
「ええ、わかったわ……」
 乙葉は京一の言う通り、離れた場所まで地面を這った。
「なんだ、お前。生意気にも、この俺様と張り合おうって言うのか?」
 バーサークが驚きながら言った。
「だったら悪いかよ」
 京一がバーサークを睨みながら、吐き捨てるように言った。
 そこへ、ルーカスが空から飛んでやってきて、
「あ、京一! 乙葉ー! ここにいたんだね」と、呑気にそう言った。
「ルーカス!」
 目を丸くして乙葉が言った。
 するとルーカスは、乙葉の元へと、徐々に下りてきた。
「もうルーカスったら、いきなり来るから驚いたじゃない」
 ルーカスを見て、乙葉が言った。
「私はてっきり、寝ているんだとばかり思っていたのよ」
「なんか人聞きが悪いな」
 不満げにルーカスが言った。
「僕、乙葉のことを探してたんだよ」
「え? そうだったの?」
 意外に思った乙葉が、驚きながら言った。
「でも、眠くなっちゃって、途中、家に帰って、少し寝てたんだけどね」
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