上 下
104 / 256
4 妹の決断

20

しおりを挟む
「どこへ行く! ちょこまか逃げるのはやめて、いいかげん、大人しくつかまったらどうだ」
 後ろで、バーサークが言った。
 真っ暗でなにも見えないため、乙葉は手さぐりで、物をよけながらすすむことにした。
 それから順調にすすんでいたのだが、途中、足に鉄の棒のような物があたり、激痛がはしった。
「いったあい……」
 乙葉は泣きべそをかきながら、しゃがんで痛む足をおさえた。
「さあさあ、はやく出てこい」
 バーサークは歩いているようだったが、どうやら物をよけている乙葉とちがって、物をあちこちに蹴飛ばしながら、だんだんと、こちらに近づいてきているのがわかった。物がいたるところで、ガラガラガッシャン、という大きな音を立てて、下におちている。
(いたい……いたいけど、走らないとバーサークがくる)
 痛む足をなんとかごまかしながら、乙葉は足を引きずって、出口を目指した。
 すると少し先に、かすかな光が、扉からもれているのが見えた。
「出口だわ!」
 ゆっくりとだが、乙葉は出口までいき、扉を開けた。
 そして、外に出て扉をしめると、その場にへたり込んだ。
「もう歩けない……」
 このままここにいたら、それほど時間がかからずに、バーサークが扉から出てきて、乙葉を見つけて殺してしまうだろう。しかし、足は動かない。たとえはいずっていったとしても、すぐに追いつかれてしまうにちがいない。乙葉は頭の中が真っ白になった。
 もう、これまでなのだろうか。まだ十七歳の若さで、死んでしまうのか。
 後ろ向きな考えが頭をよぎる。
「いや、追いつかれてもいいから、はいずってでもいこう」
 まるで赤ん坊のように手を使って、乙葉は地面をはった。
 とにかくバーサークから逃げるために、必死だった。
 なんとか五メートルくらい進んだところで、後ろの扉がひらく音がした。
 止まって後ろを振り向くと、バーサークが仁王立ちをして、こちらを見ているのが目に入った。そして持っていたライトは、どこかに置かれ、かわりにのながい鉄の、大きなハンマーを手にしていた。あんな物で殴られたら、ひとたまりもない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

連れ子が中学生に成長して胸が膨らむ・・・1人での快感にも目覚て恥ずかしそうにベッドの上で寝る

マッキーの世界
大衆娯楽
連れ子が成長し、中学生になった。 思春期ということもあり、反抗的な態度をとられる。 だが、そんな反抗的な表情も妙に俺の心を捉えて離さない。 「ああ、抱きたい・・・」

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

堕ちた父は最愛の息子を欲に任せ犯し抜く

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

そんなふうに見つめないで…デッサンのモデルになると義父はハイエナのように吸い付く。全身が熱くなる嫁の私。

マッキーの世界
大衆娯楽
義父の趣味は絵を描くこと。 自然を描いたり、人物像を描くことが好き。 「舞さん。一つ頼みがあるんだがね」と嫁の私に声をかけてきた。 「はい、なんでしょうか?」 「デッサンをしたいんだが、モデルになってくれないか?」 「え?私がですか?」 「ああ、

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

獣人ディックと赤ずきんちゃん

佐倉穂波
児童書・童話
「赤ずきん」の物語を読んでトラウマになった狼の獣人ディックと、ほんわかしてるけど行動力のある少女リリアの物語。 毎日6時更新中。

処理中です...