上 下
76 / 256
3 メリーゴーランド

36

しおりを挟む
 日が暮れてきたころ、三人は、ルーカスの住む小屋へと、足をはこんだ。
 すると帰って早々に、京一が、自分のリュックを逆さまにして、中身を出しはじめた。
 それから小屋のテーブルの上には、大量の缶詰やレトルト食品、飲料水などの、非常食がいくつも並べられた。
 その光景を見て、早速、ルーカスが、
「わー! これ、どうしたの?」と、わくわくした様子でそう言った。
「こういうこともあろうかと、ここにくる前に、元の世界の店で、あらかじめ大量に、買いだめしておいたんだ」
 ほこらしげに京一が言った。
「京一ー、あなたも神様だったの?」
 両手を、胸の前であわせた乙葉が言った。
「食べ物くらいで大げさだ」
 微笑しながら京一が言った。
「これだけあれば、一週間はくらせるだろう。ただ、そのあとが問題だ。一週間以内に、なんとかここを出るしかない」
「そうね」
 乙葉が言った。
「私のリュックの中にも、少しだけどお菓子あるし、これで食料の心配は、しばらくいらないわね」
「ねえねえ、これなに?」
 テーブルの上にある、カラフルで派手なパッケージの食料を、一つ指さして、ルーカスが尋ねた。
「ああ、それは、常夏とこなつのマーメイドカレーよ」
 乙葉が答えた。
「“常夏のマーメイドカレー”?」
 聞きなれない名前に、ルーカスが首をかしげながら、繰り返して言った。
「なにそれ、おいしいの?」
「ええ、おいしいわよ」
 即座に乙葉が言った。
「中には魚のしっぽと、ホタテが貝殻つきで入っていて、本当にマーメイドみたいなカレーに、盛りつけできるの」
「へえ。なんだか外には、僕の知らないような食べ物が、いろいろ出てきているんだねえ」
しおりを挟む

処理中です...