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3 メリーゴーランド

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 すると、ルーカスは京一の方を見て、
「え? 何者って、なんのこと? 僕はただの、自由気ままなルーカスだよ」と、あくまでもシラをきった。 
「俺が聞いているのは、そういうことじゃない」
 冷静に京一が言った。
「じゃあ、どういうこと?」
 ルーカスは首をかしげた。
 京一は何度も聞かれて、むしゃくしゃした顔になると、急にため息をつき、
「もういいよ」と言った。
「僕、京一がなにを言っているのか、全然わからないよ」
 少し不自然な感じで、ルーカスが言った。
 京一は考えるように、視線を下におとしたあとで、再びルーカスを見ると、
「でもお前、本当は、本物の鍵がある場所を、知っているんじゃないのか?」と言った。
 そこで、ルーカスはなにか、意味ありげに京一をいちべつすると、
「そんなわけないよ。だって、鍵のある場所を知っているのに、それを隠してまで、一緒に鍵探しをするなんて、どう考えてもおかしな話でしょ?」と言った。
「だから僕、本当になんにも、知らないんだもーん」
 そう言うと、ルーカスは空中に飛び上がり、円をかくようにして、無邪気にまわりはじめた。
「まあ、それもそうか」
 妙に納得した様子で、京一が言った。
「あーあ、これで帰れると思ったんだけどな」
 乙葉が呟いた。
「まあいい。また探せばいいんだ」
 気をとり直すように、京一が言った。
 せっかく見つけた鍵がダミーだとわかり、乙葉は先が長くなりそうだと思った。

                 ♢♢♢
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