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3 メリーゴーランド

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「まあやってみよう」
 京一は前向きにそう言うと、最後の鍵を、鍵穴に入れてまわした。
 しかし、結果はおなじだった。
「だめだ。全部ちがった」
 頭をかかえながら、京一が言った。
「そんな……あんなにたくさんあったのに」
 気を落としながら、乙葉が言った。
 そんな二人の様子を見ていたルーカスは、突然、
「ああ、そうか。それは多分、ダミーの鍵だよ」と言った。
「ダミーの鍵?」
 けげんに思った乙葉が尋ねた。
「そう。この園内にはいくつか鍵があって、その中のひとつが本物なんだ」
 たんたんとルーカスが言った。
「だから、それはダミーの鍵」
「ええっ」
 予想外なことを言われ、驚愕した乙葉が声をあげた。
「おいおい、そんな大事なこと、なんでもっとはやく教えてくれなかったんだよ」
 いまさらになって言ってきたルーカスに、京一は乙葉の時と同様、せめるように言った。
「ごめんごめん。すっかりいうの忘れちゃってたよ」
 ルーカスはあやまっているわりに、あまり悪びれているようには見えなかった。
「ったく」
 呆れたように、京一が言った。
 あの時の違和感はあたっていた。あんなにわかりやすい場所に置いてあるのに、いままでの人全員が、見つけられなかった、なんてこと、ありえるはずがないんだ。でも、いまさらそんなことをいっても、もうおそい。
「それよりルーカス。この鍵がダミーであることを知っていたということは、お前、只者じゃないな」
 真剣な顔をして、京一が言った。
「お前は一体、何者だ」
 京一がそう尋ねると、少しの間、沈黙が流れた。
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