ルーカスと呪われた遊園地（上）

３ メリーゴーランド

１８

「なに言ってるんだよ。遊んでいる暇なんかないぞ。それに、今日は学校だ」
　呆れながら京一が言った。
「学校？」
　乙葉は首をかしげた。
　そしてすぐに、
「あ！　そうだわ。今日、友達と一緒に、学校に行く約束をしてたのよ。大変、どうしましょう」と、突然、思い出して言った。
　すると京一は、落ちついた様子で、
「もうすぐ、登校の時間だ。だからその約束には、とうに間に合わない」と言った。
「それもそうよね……」
　乙葉は肩を落とした。
「親たちも心配してる。今のうちに連絡しておくか」
　そう言うと、京一はスマホを取り出した。
「あ、いや、ここは……」
　乙葉がなにかをいう前に、
「くそ、圏外だ」と、京一が言った。
「スマホ、使えないのよね」
　あらためて乙葉がいうと、京一は何もいわずに、ただけわしい顔をした。
　二人がそう言ったやりとりをしている中、ルーカスは退屈そうに、一人で空に絵を描いて、遊んでいた。
「でも、京一がきてくれてよかったわ。だって私一人より、よっぽど心強いもの」
　ふいに乙葉が言った。
「ああ」
　なんでもないように、京一が言った。
「ていうか、そもそもお前、なんでこんなところに、一人で入っちゃったんだよ。日頃、周りのやつらから、口うるさく言われていただろ？　ここには入るなって」
　急に思い出したように、怒りながら京一が言った。
　乙葉は、少しムッとすると、
「だって私には、猫を見捨てることなんて、できなかったんだもの」と言った。
「猫？　猫を助けるために、リスクを背負ってまで、わざわざこの危険な遊園地に、入ってきたっていうことか？」