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3 メリーゴーランド

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 京一は乙葉の手を振りはらい、自分の頬をやさしくさすった。
「でも、ね? これでわかったでしょ?」
 乙葉が言った。
「私たちは、ちゃんと生きてるの」
「……みたいだな」
 不本意だとでも言うように、京一が言った。
「ねえねえ、そんなこといいから、京一も一緒にさ、遊ぼうよ!」
 ルーカスが、京一の腕を引っぱって言った。
「みんなで遊んだ方が、絶対楽しいし」
「いや、俺はいい」
 きっぱりと京一が断った。
「遊ぶなら、勝手に一人で遊んでくれ」
「ちぇっ、なーんだ。遊ばないのか」
 そう言うと、ルーカスは京一から離れて、少し遠くで飛びはじめた。
 そんな時、乙葉は京一を見て、
「ねえ京一、さっきの話の続きだけど、この世界は、普通じゃないのよ。だから、たとえ外に出られたとしても、元の世界に戻れるかどうかは、わからないわよ」と言った。
「普通じゃない、ね……」
 乙葉の話を聞きつつ、京一は、あらためて周りを見まわした。
「まあたしかに」
「でしょ?」
 乙葉が言った。
「この遊園地の門の扉は、ルーカスいわく、鍵がないと開けられないらしいの。だから、とりあえず鍵だけ探して、あとで元の世界に戻る方法を、探ろうと思っているんだけど」
「なるほどな。で、その鍵はどこにあるんだ?」
 京一が言った。
「それは、これから探すところよ。さっきまではちょっと、ルーカスと遊んでいたから、探せなかったんだけど」
 鍵探しよりも、遊びを優先してしまったことに、乙葉は少し、うしろめたさを感じながら言った。
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