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3 メリーゴーランド

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 ルーカスも目をこらして、遠くを見始めた。
「ほら、あそこだってば」
 指をさして乙葉が教えた。
 するとルーカスは、乙葉の指をさした先を見て、
「本当だ! なにか、地面に横たわってる!」と言った。
「ねえ乙葉。面白そうだし、ちょっと近寄って、たしかめてみようよ」
「えっ、ちょっとそんな、だめよ。そんなに警戒心もなく近づいたら。もしかしたら、危険な動物とかかもしれないわよ」
 乙葉がとっさに止めた。
「別に大丈夫だよ」
 そう言うと、ルーカスはすごい速さで飛んでいき、一人でそのなにかに近づいていった。
「ちょっ、ちょっと待って! ルーカス!」
 乙葉は必死で、ルーカスのあとを追いかけた。
「はやくー! 乙葉もこっちにきてー」
 遠くで、ルーカスがそう言った。
「もう、待ってって言ってるのに」
 走りながら、息を切らして乙葉が言った。
 そしてルーカスは、乙葉より先に、そのなにかがいる場所までたどりつき、
「ねえ見て! なにかと思ったら、人だったよ!」と言った。
「え? 人?」
 不審に思いながら、乙葉が言った。
 まさかこんなところに、自分以外の人が、来るわけがない。なにしろ元の世界では、ここは廃墟の遊園地で、立ち入り禁止区域だったからだ。人なんて、滅多に入るはずがない。
 それなのに、どうして?
 乙葉は疑問に思いながら、ルーカスと、その誰か、得体の知れない人がいる場所まで、徐々に近づいていった。
 まもなくして、乙葉は二人のいる場所まできた。そして、倒れている人を見てすぐに、
「えっ、うそ、本当だわ! 本当に人がいるじゃない!」と、驚愕しながら言った。
「ね? だからいるって言ったでしょ」
 ルーカスが言った。
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