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3 メリーゴーランド

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「そうよ、私が掃除したの」
 自慢げに乙葉が言った。
「どう? きれいでしょ。掃除する前のあの状態じゃ、ルーカスも生活しづらいかなって思って」
 ルーカスはキラキラと、輝きにみちた目を、小屋中に向けている。
 そんなルーカスを見た乙葉は、満足だと思いながら、
「すごいでしょ」と言った。
「すごい! ありがとう、乙葉!」
 ルーカスは乙葉に抱きついた。
「どういたしまして」
 微笑みながら乙葉が言った。
 そして、乙葉から離れたルーカスは、
「このテーブルとか椅子とか、どこから持ってきたの?」と、中央に配置されている、テーブルと椅子を見て、不思議そうに言った。
「ああ、これ?」
 こともなげに乙葉が言った。
「部屋の中にあったわよ。いろんな物に隠れて、見えなくなっていたみたい」
「ええ!」
 ルーカスが驚いて言った。
「そうだったんだ。こんな素敵な家具が、この部屋にあったなんて、いままで全然知らなかったよ」
 とても感激している様子のルーカスを見て、乙葉は掃除をしてよかったと、心から思った。
「それにしても、私、昨日の夜から、なにも食べてないんだったわ」
 お腹を押さえながら、空腹を思い出した乙葉が言った。
「あ、そうだ! 昨日のお菓子が、たしかまだ、リュックの中に残っていたはず!」
「お菓子? 食べたい!」
 ルーカスが言った。
「でも、ルーカスは昨日さんざん、私のお菓子を食べたでしょ?」
 乙葉が呆れて言った。
「だから、もうあげないわよ」
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