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2 残虐な着ぐるみ

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「ああ、でも僕、乙葉がここにきてくれて、すごくうれしいよ。だってこれからは、乙葉とずっと、遊んで過ごせるんだもん」
 なにを勘違いしているのか、ルーカスはうれしそうに、顔を綻ばせながらそう言った。
「え? いや、私、ずっとは遊べないわ」
 即座に乙葉が否定した。
「だって家に帰らないといけないし、学校にも行かないといけないもの」
「ええー」
 がっかりしたように、ルーカスがそう言った。
「あ、そうだ! この遊園地の外に出る方法って、知ってる?」
 突然、閃いた乙葉が言った。
「私、この遊園地から、一刻もはやく出たいんだけど」
 すると、これまでずっと笑顔だったルーカスは、突然、まじめな顔になり、
「残念だけど、それは無理だよ」と言った。
 はっきりとそう言われ、ショックを受けた乙葉は、
「え……」と、思わず口にしていた。
 ルーカスはそんな乙葉の姿を見て、予想通りの反応だと思ったのか、すぐに真面目な顔から、おどけた顔になった。
「まあ、でもさ、そんなに気にしなくても、大丈夫だよ。だってここにいれば、一日中僕みたいに、自由に過ごせるしさ」
「いや、私はそれだと困るのよ」
 焦った顔をして乙葉が言った。
「どうして、遊園地の外には出られないの?」
「一度人間がここに足を踏み入れたら、もう二度と外には出られない。いままでの人間だって、ここから出た者は、一人もいないよ。だから、君はここで死んでいく。それが運命なんだ」
 またまじめな顔になったルーカスが言った。
「そんな……」
 だんだん、乙葉の顔に、失望の色が広がっていった。
(そんなの、絶対にいや。私はここから出たい。ここで死にたくなんかない)
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