ルーカスと呪われた遊園地（上）

１ 迷い込んだ少女

１０

「ふーん。なんだ、そうなんだ」
　内田は間のぬけた顔をした。
「まあ、それならそれで無理しないでよ。つらくなったらいつでも言ってね」
「はい、ありがとうございます」
　期待していた色事ではなく残念そうにしていたが、それでも優しい内田は、京一の体調が悪いと思ったのか、必要以上に気づかってくれた。
（俺としたことが、先輩に誤解されてしまった上に、余計な心配までかけてしまった。くそ、失態だ。これからは気を引き締めねばならん）
　武道を志す者として、気をゆるめることなどあってはならない。これがもし試合であったら、敵に一本取られていたところだ。そうならないためには、恥じない言動を心がけ、いついかなる時でも、気を抜かないようにしなければ。
　だが——声の主は、苦しそうに自分の名前を呼んでいた。だから、それが少し気になる。
　しかし、誰も呼んでいないのなら、これ以上気にする必要はない。
「あ、いらっしゃいませー」
　いろいろ考えているうちに、客がレジにやってきた。内田は考えている京一をよそに、客の持っているカゴを素早く受けとった。
（よし、仕事だ。余計なことはもう考えないぞ）
　それから、京一は張り切って接客に励んだ。

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