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物語のおわり

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 すると、大切にしまっていたはずの、ルーカスからもらった手紙が、地面に落ちているのに気づいた。
 そのルーカスの手紙は、ついてしまったしわを伸ばして、丈夫な封筒に入れ、いつも持ち歩くカバンの中に入れていたものだった。
 乙葉は急いで手紙を拾い、封筒についてしまった土を、パンパンとしっかり叩いた。
 それを見ていた京一は、乙葉の近くにまでかけ寄ると、
「お前それ、まだ持ってたのかよ」と、おどろきながら言った。
「悪い?」
 京一をじろりとにらみながら、乙葉が言った。
「これは私の、たいっせつな、宝物なの!」
「あっそう」
 あまり興味がなさそうに、京一が言った。
「まあ、別にいいけど」
「それにしても、なんでこれ、急にカバンから落ちちゃったのかしら。ちゃんと奥にしまっておいたはずなのに」
 不思議に思いながら乙葉が言った。
「あいつのことだから、お前にかまってもらえなくて、ねているんじゃないのか?」
 冗談っぽく京一が言った。
「まさか」
 乙葉は笑いながら、すぐに否定した。
 それから京一は空を見上げると、
「あいつ、いまも元気にしているといいな」と言った。
 つづけて乙葉も空を見上げて、
「うん、そうね。きっと元気よ」と言って、空に向かって、優しく微笑んだ。




                                     END
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