上 下
243 / 246
物語のおわり

しおりを挟む
 乙葉はそれを聞いて、あまりのショックから、思わず呼吸が止まりそうになった。
「そうだ。俺たちが見たあのルーカスは、幻みたいなものだったんだ」
 乙葉の言葉のつづきを、京一が引き取った。
「そんなの、あんまりだわ」
 悲痛な面持ちで乙葉が言った。
「でも、だからルーカスはあの時、あんなにジェットコースターのそばにいくことをこばんだり、ジェットコースターが嫌いなわけを、かたくなに話そうとしなかったのね……」
 乙葉はここで納得した。
「ちなみにいうと、ルーカスはあの創設者の、一人息子だったらしい」
 京一が付け足した。
「親子だったのに、ボスと手下のような関係なんて、考えられないわ」
 うつむきながら乙葉が言った。
「でも、もうそれも、過ぎてしまったことなのよね」
「そうだ。だからこのことは、心の奥に、閉まっておくことにしよう」
 胸の辺りに手を置きながら、京一が言った。
「大切に、ね……」
 つづけて乙葉が言った。
 それから二人は気が済むまで、しばらく廃墟の遊園地の跡地で過ごした。

                 ♢♢♢
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】玩具の青い鳥

かのん
児童書・童話
 かつて偉大なる王が、聖なる塔での一騎打ちにより、呪われた黒竜を打倒した。それ以来、青は幸福を、翼は王を、空は神の領域を示す時代がここにある。  トイ・ブルーバードは玩具やとして国々を旅していたのだが、貿易の町にてこの国の王女に出会ったことでその運命を翻弄されていく。  王女と玩具屋の一幕をご覧あれ。

チュヴィン

もり ひろし
児童書・童話
スズメのチュヴィンと和寿のきずなの物語

石集め

早乙女純章
児童書・童話
ゆうくんは、不思議なおじさんから見たことのないきれいな石をもらいます。 けれど、もらった石はおじさんの家でしか見ることはできませんでした。なので、石を見るためには毎日おじさんの家に行かなければなりませんでした。おじさんの家に毎日通えば、その度にきれいな石を一個もらえました。 おじさんの家にはゆうくん以外にもたくさんの子供たちが遊びに来ていて、石をもらったり、おもちゃで遊んだりしていました。

魔法使いアルル

かのん
児童書・童話
 今年で10歳になるアルルは、月夜の晩、自分の誕生日に納屋の中でこっそりとパンを食べながら歌を歌っていた。  これまで自分以外に誰にも祝われる事のなかった日。  だが、偉大な大魔法使いに出会うことでアルルの世界は色を変えていく。  孤独な少女アルルが、魔法使いになって奮闘する物語。  ありがたいことに書籍化が進行中です!ありがとうございます。

天空の魔女 リプルとペブル

やすいやくし
児童書・童話
天空の大陸に住むふたりの魔女が主人公の魔法冒険ファンタジー。 魔法が得意で好奇心おうせいだけど、とある秘密をかかえているリプルと、 基本ダメダメだけど、いざとなると、どたんばパワーをだすペブル。 平和だった魔女学園に闇の勢力が出没しはじめる。 王都からやってきたふたりの少年魔法士とともに、 王都をめざすことになったリプルとペブル。 きほんまったり&ときどきドキドキの魔女たちの冒険物語。 ふたりの魔女はこの大陸を救うことができるのか!? 表紙イラスト&さし絵も自分で描いています。

R:メルヘンなおばけやしき

stardom64
児童書・童話
ある大雨の日、キャンプに訪れた一人の女の子。 雨宿りのため、近くにあった洋館で一休みすることに。 ちょっぴり不思議なおばけやしきの探検のおはなし☆

落語のような世界

青西瓜(伊藤テル)
児童書・童話
 サッカーに取り組んでいたが、ケガをして選手になる夢が絶たれた由宇。  やりたいことが無くなって虚ろにリハビリを繰り返していると、幼馴染の京子が暇つぶしにと落語のCDと落語の本を持ってくる。  最初は反発したが、暇過ぎて聞いてみると、まあ暇つぶしにはなった、と思う。  そのことを1週間後、次のお見舞いに来た京子へ言うと、それは入門編だと言う。  そして明日は落語家の輪郭亭秋芳の席が病院内で行なわれるという話を聞いていた京子が、見に行こうと由宇を誘う。  次の日、見に行くとあまりの面白さに感動しつつも、じゃあ帰ろうかとなったところで、輪郭亭秋芳似の男から「落語の世界へ行こう」と誘われる。  きっと輪郭亭秋芳の変装で、別の寄席に連れてってくれるという話だと思い、由宇と京子は頷くと、視界が歪む。  気が付いたら落語のような世界にワープしていた。

猫神学園 ~おちこぼれだって猫神様になれる~

景綱
児童書・童話
「お母さん、どこへ行っちゃったの」 ひとりぼっちになってしまった子猫の心寧(ここね)。 そんなときに出会った黒白猫のムムタ。そして、猫神様の園音。 この出会いがきっかけで猫神様になろうと決意する。 心寧は猫神様になるため、猫神学園に入学することに。 そこで出会った先生と生徒たち。 一年いわし組担任・マネキ先生。 生徒は、サバトラ猫の心寧、黒猫のノワール、サビ猫のミヤビ、ロシアンブルーのムサシ、ブチ猫のマル、ラグドールのルナ、キジトラのコマチ、キジ白のサクラ、サバ白のワサビ、茶白のココの十人。 (猫だから十匹というべきだけどここは、十人ということで) はたしてダメダメな心寧は猫神様になることができるのか。 (挿絵もあります!!)

処理中です...