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物語のおわり
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そして乙葉はコンビニでお菓子を買ったあと、ほかですこし買い物をしてから、京一との待ち合わせ場所に向かった。
「きょういちー! お待たせ!」
色鮮やかな花束を持った乙葉が、小走りをしながら、元気よくそう言った。
「お前、おそいぞ。十分も遅刻だ」
腕時計を見ながら、イライラした様子の京一が言った。
「別にいいじゃない。細かいことは気にしない。さ、はやく行きましょう」
そう言うと、乙葉は京一の背中を押した。
「まったく、お前と出かけるといつもこうだ」
背中を押されている京一が、乙葉の方を振り返って、小言を言った。
いま二人がいるこの場所は、かつて八日間ほど閉じ込められていた、あの廃墟の遊園地だ。
いまではここは、完全に安全な場所になっていて、誰でも出入りできるようになっていた。しかし、建物や乗り物などはすべて撤去されていて、残っているものはもうなにもなく、ただの平地になっていた。
そんな場所に、どうしてこの二人がいるのかというと、それは、乙葉がルーカスとした約束を果たすためだった。
『もし外に出られたら、この遊園地に忘れず遊びに行く』
これが乙葉とルーカスの間に交わされた、大切な約束だ。
本当のことをいうと、別に京一はこなくてもよかったのだけど、
「危ないから一緒に行く」と、京一が言って聞かなかったため、一緒に行くことになったのだ。
乙葉は以前、門があった場所に、持ってきた花と、ルーカスの大好物だった、いくつかのチョコレートのお菓子を手向けると、静かに目を閉じて、両手を合わせた。
「なあ乙葉、ルーカスのことなんだが」
ふと、乙葉の後ろに立っていた京一が言った。
乙葉は、チラッと片目を開けて、京一の方を見ると、
「なに?」と言った。
「実は、あいつの本名がわかったんだ」
京一が言った。
「うそ……! それ、本当?」
「きょういちー! お待たせ!」
色鮮やかな花束を持った乙葉が、小走りをしながら、元気よくそう言った。
「お前、おそいぞ。十分も遅刻だ」
腕時計を見ながら、イライラした様子の京一が言った。
「別にいいじゃない。細かいことは気にしない。さ、はやく行きましょう」
そう言うと、乙葉は京一の背中を押した。
「まったく、お前と出かけるといつもこうだ」
背中を押されている京一が、乙葉の方を振り返って、小言を言った。
いま二人がいるこの場所は、かつて八日間ほど閉じ込められていた、あの廃墟の遊園地だ。
いまではここは、完全に安全な場所になっていて、誰でも出入りできるようになっていた。しかし、建物や乗り物などはすべて撤去されていて、残っているものはもうなにもなく、ただの平地になっていた。
そんな場所に、どうしてこの二人がいるのかというと、それは、乙葉がルーカスとした約束を果たすためだった。
『もし外に出られたら、この遊園地に忘れず遊びに行く』
これが乙葉とルーカスの間に交わされた、大切な約束だ。
本当のことをいうと、別に京一はこなくてもよかったのだけど、
「危ないから一緒に行く」と、京一が言って聞かなかったため、一緒に行くことになったのだ。
乙葉は以前、門があった場所に、持ってきた花と、ルーカスの大好物だった、いくつかのチョコレートのお菓子を手向けると、静かに目を閉じて、両手を合わせた。
「なあ乙葉、ルーカスのことなんだが」
ふと、乙葉の後ろに立っていた京一が言った。
乙葉は、チラッと片目を開けて、京一の方を見ると、
「なに?」と言った。
「実は、あいつの本名がわかったんだ」
京一が言った。
「うそ……! それ、本当?」
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