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6 さよなら

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 京一と内田の二人が戻ってくるのを、他のみんなが心配した面持ちで、今か今かと待っていた頃、遠くから、その本人である京一が、ようやく内田を連れて戻ってきた。
「おーい!」
 京一が走りながら声を上げると、そのすぐ後ろで走っていた内田も、
「みんなー!」と、大声でいうのが聞こえた。
 それで皆はいっせいに、京一と内田の方を向いた。
「京一くん! 内田さん!」
 喜びながら柚子が言った。
「よかった、無事だったのね」
 しばらくすると、皆が見守る中、二人は門までやってきて足を止めた。内田はひざに手をつきながら、つらそうに息を切らしている。しかし、そのとなりにいる京一は、まだ余裕のある感じで立っていた。
「二人とも無事に戻ってきて、本当によかったわ」
 乙葉が安心した様子で言った。
「本当に。ケガもなにもなさそうで、なによりです」
 久遠が言った。
「まあ、途中、結構危なかったけどな」
 京一が苦笑しながら言った。
「もう、いい加減、待ちくたびれたよ」
 口ではそう言いつつも、嬉しそうにしているルーカスが言った。
 内田はそこで、なんとか息を整えると、
「ねえ、みんな。それより聞いて。僕、びっくりしちゃったよ。小屋の中にいたら、突然、揺れはじめるんだから」と、興奮した様子で言った。
「それにさ、誰も近くにいなかったから、どうしようかって、ずっと迷っていたところだったんだ。そんな時に、京一くんが呼びに来てくれたから、思わず安心したよ」
「まあ、そうだったのね」
 乙葉が言った。
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