ルーカスと呪われた遊園地（下）

５ クラウスの剣

５０

「……わかったわ」
　柚子はみんなに説得されて、とうとう涙ながらにそう言った。
　そんな柚子を見た乙葉も、柚子と同じように、つらい気持ちになった。
　ムムはバーサークに仕えてはいるけれど、とても優しくて、純粋で素直な子だった。
　そのムムが死んでしまうのは悲しいけれど、京一の言うとおり、いま城の中に助けにいけば、絶対に誰も助からないという確信があった。
　だから悲しいけれど、ムムのことは、潔いさぎよくあきらめることにした。
　そのかわり、乙葉は心の中で、これまで自分たちのためにいろいろと協力してくれたムムにたいして、たくさん感謝した。
　そのあと、みんなで出口に向かって、全速力で走った。
　走っていると、園内にある観覧車やジェットコースター、メリーゴーランドなどの乗り物が、だんだんと崩壊していっているのが乙葉の目に入った。それだけではなく、ミラーハウスやカフェなどの建物もおなじ状況だった。
「うわあ……」
　乙葉はそのあまりの壮絶さに、思わず声を漏もらしていた。
　それからどんどん先に進んでいくと、次は、木が根まで抜けて倒れているのが、目に飛び込んできた。それに見かけがとても頑丈そうな電灯も、折れて道に倒れている。おまけに自動販売機やトイレなども、みんな壊れてしまって、姿形がまるで別のものになっていた。いまや周りのどこを見回しても、なにもかもが壊れていっている。
　これまで流れていた楽しい音楽も、もうとっくに止まっていて、現在、園内で聞こえてくる音は、もはや、物が壊れる音や地響きくらいだった。
　こうしてすっかりと変わり果ててしまったこの遊園地を見て、乙葉は悲しくてたまらない気持ちになった。
「なんかすげえな。こんなに崩壊しちまうなんて」
　まわりを珍しそうに見て走りながら、銀司が言った。
「そんなこといいから、とにかく走れ！」
　京一が走りながら、銀司に向かって叫んだ。
　やがて、走っていたみんなは、門のある出口まで到着した。
　ここまでくると、まだ崩壊はそこまで進んでおらず、園内の中ほどよりかは、音もはるかに静かになっていた。