ルーカスと呪われた遊園地（下）

５ クラウスの剣

３２

「そうだけど」
　不満げにルーカスが言った。
「だったらやってみてよ」
　乙葉はすこし強引にそう言うと、ルーカスの肩をつかんで、顔認証システムのカメラの前に移動させた。
　しかしまたしても、画面には『ＮＯ』と表示された。
「あら、やっぱりこの財宝は、ルーカスのじゃないのね」
　乙葉はますます頭を悩ませた。
「だから言ったじゃん」
　すかさずルーカスが文句を言った。
「ボスは写真が撮れる顔もないし、一体どうすればいいの？」
　乙葉はさすがに、今度ばかりは考えてもなにも思い浮かばなかった。
　これ以上自分だけで考えることが限界になった乙葉は、とうとう、
「ルーカス、お願い！　なにかヒントちょうだい」と言った。
「ヒント？」
　ルーカスは聞き返した。
　乙葉は何度も首を縦に振った、
「仕方ないなあ」
　どうやら乙葉の必死さに負けて、ルーカスはようやく、ヒントを教えてくれる気になったようだ。
「教えてくれるの⁉︎」
　希望に満ちた目で乙葉が言った。
「そのかわり、今回だけだからね」
　釘を刺すようにルーカスが言った。
「ありがとう、ルーカス！」
　乙葉はそう言うと、飛んでいるルーカスに向かって、抱きついた。
　ルーカスは一瞬だけ照れたような顔をすると、すぐにいつもの顔に戻り、
「暑苦しいから、もう離れてよ」と言った。
　乙葉は謝りながら、ルーカスの体から離れた。
「あのね、ボスは昔人間だったから、ちゃんと顔あったよ」