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5 クラウスの剣

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「ということだから、二人とも、頼んだぞ」
 それだけ言うと、京一はまた、くまとの戦いを再開させた。
 乙葉はいきなり、最も責任重大なことを任されてしまい、呆然としながらその場に立っていた。
「京一くん、なんだかくまを倒すことに夢中になってるみたいね」
 呆れ声で柚子が言った。
「本当に、柚子の言うとおりよ」
 乙葉がおこりながら言った。
「なんでよりにもよって、私がボスを倒しにいかなきゃいけないの? いくなら京一がいけばいいじゃない」
「私思うんだけど、それは、相手がお姉ちゃんだから、任せられると思ったんじゃない?」
 なんだか深い意味がありそうなことを、柚子が言った。
 乙葉はその言葉の意味がいまいちピンとこずに、
「え?」と、聞き返した。
「私はほら、か弱いし。お姉ちゃんならたくましいから、いざという時でも、なんとかなりそうじゃない」
 柚子があっけらかんとして言った。
「なによ、それ……私だって、か弱いんだからね!」
 張り合うように乙葉が言った。
「二人とも、こんなところでケンカしないでよ」
 ルーカスが言った。
「ごめん」
 乙葉と柚子は同時にあやまった。
「でも、本当のこというと私もね、お姉ちゃんなら、ボスを倒してくれそうな気がするの」
 期待を込めるように、柚子が言った。
根拠こんきょはないんだけど、なんかこう、直感っていうか」
「それ、本気で言ってる?」
 疑った乙葉が言った。
「本気よ」
 はっきりと柚子が言った。
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