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5 クラウスの剣

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 乙葉が叫んだ。
 すると、柚子は突然、その辺に転がっていた石につまずき、地面に転んでしまった。
 そのあと地面に座り込んだ柚子は、痛がって足をさすりながら、自身に迫ってきている、くまのことを気にして見ていた。
 コックのくまと柚子との距離はどんどん縮まっていき、いまではあと数メートルのところまでくまがきていた。
 まずい。このままでは柚子がやられてしまう。
 乙葉は身をていしてでも柚子を守ろうと、転んでいる柚子の元まで走った。
「柚子、待ってて! いま助けにいくから!」
 柚子はくまから逃げようと、よろよろと立ち上がり、痛がっている足を動かして、無理やり歩きはじめた。
 その時、距離が離れていたはずのくまが、いつの間にか柚子の背後まできていて、いまにも包丁を振り下ろそうとしていた。
「柚子! 危ない、けて!」
 青ざめた顔の乙葉が、必死で叫んだ。
 柚子はとっさに自分を守ろうと、振り返って、腕を顔の前に出した。
 もうダメだ。乙葉はそう思って目をつむった。
 そのあと、おそるおそる目を開けてみると、なんと柚子の前に、園芸で使うような、すべて鉄でできている大きなスコップを持って、くまの包丁を制している銀司の姿が、乙葉の目に飛び込んできた。
「銀司……」
 おどろきながら乙葉が言った。
 銀司は柚子を守りながら、
「危なかったな、嬢ちゃん」と言った。
 柚子は目の前で起こっていることが信じられないとでもいうように、目を丸くしながら、銀司のことを見ていた。
 それから銀司は悪戦苦闘しながらも、なんとかくまから包丁をはたき落とし、持っていたスコップでトドメをさした。
「ふう、なんとかなったぜ」
 額に流れている汗を拭きながら、銀司が言った。
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