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5 クラウスの剣
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「うそでしょ? いやよ、そんなの」
柚子が、透明の壁を触りながら言った。
どうやら残念なことに、外の世界にはまだ出してもらえないらしい。
「せっかく苦労して、本物の鍵を手に入れたのに」
骨折り損のくたびれもうけにもほどがある、と乙葉は思った。
乙葉たちは鍵を手に入れさえしたら、元の世界に戻れるとばかり思っていたために、そのショックは計り知れないものとなった。
乙葉はこの時、ここにくるまで、自分の考えが足りなかったことを後悔していた。
本物の鍵を探すことに夢中になりすぎていて、ルーカスに元の世界にもどれる方法を聞くことを、つい忘れてしまっていたのだ。
どうしてこれまで気づかなかったのだろう。
「くそ! マジで全然前に進めねえ!」
銀司が怒り出し、拳で透明な壁を叩きながら言った。
「期待して損したわ」
「あーあ、今度こそ外に出られると思っていたのに」
つづいて柚子が、悲しそうな顔で嘆いた。
「どうしますかね……」
久遠が思い悩むように言った。
「落ち着け、みんな」
冷静に京一が言った。
「大丈夫だ。探せばきっと、まだ方法はあるはずだ」
「でも、方法ってなに?」
疑わしそうに柚子が言った。
「そんな都合のいい方法なんてある?」
それを聞いたみんなは、柚子の問いに頭を抱えた。
「ねえ、ルーカス」
乙葉が呼んだ。
すこし離れたところで飛んでいたルーカスは、乙葉の元に近づいてくると、
「なに?」と言った。
「ルーカスは知っているんでしょ? 元の世界にもどれる方法を」
柚子が、透明の壁を触りながら言った。
どうやら残念なことに、外の世界にはまだ出してもらえないらしい。
「せっかく苦労して、本物の鍵を手に入れたのに」
骨折り損のくたびれもうけにもほどがある、と乙葉は思った。
乙葉たちは鍵を手に入れさえしたら、元の世界に戻れるとばかり思っていたために、そのショックは計り知れないものとなった。
乙葉はこの時、ここにくるまで、自分の考えが足りなかったことを後悔していた。
本物の鍵を探すことに夢中になりすぎていて、ルーカスに元の世界にもどれる方法を聞くことを、つい忘れてしまっていたのだ。
どうしてこれまで気づかなかったのだろう。
「くそ! マジで全然前に進めねえ!」
銀司が怒り出し、拳で透明な壁を叩きながら言った。
「期待して損したわ」
「あーあ、今度こそ外に出られると思っていたのに」
つづいて柚子が、悲しそうな顔で嘆いた。
「どうしますかね……」
久遠が思い悩むように言った。
「落ち着け、みんな」
冷静に京一が言った。
「大丈夫だ。探せばきっと、まだ方法はあるはずだ」
「でも、方法ってなに?」
疑わしそうに柚子が言った。
「そんな都合のいい方法なんてある?」
それを聞いたみんなは、柚子の問いに頭を抱えた。
「ねえ、ルーカス」
乙葉が呼んだ。
すこし離れたところで飛んでいたルーカスは、乙葉の元に近づいてくると、
「なに?」と言った。
「ルーカスは知っているんでしょ? 元の世界にもどれる方法を」
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