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4 死闘

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 バーサークは、素っ頓狂な声を出した。
 京一と乙葉はその声におどろき、思わず足を止めた。
 見ていると、久遠はいきなり、馬乗りしているバーサークを投げ飛ばし、立ち上がり出した。
「えっ、久遠くん、どうして?」
 ひどくおどろきながら、乙葉が声を上げた。
 つづけて、
「一体、体のどこにそんな力が残っていたんだ」と、京一がおどろきながら言った。
 立ち上がった久遠は拳を握りしめ、尻もちをついているバーサークを、思いきりにらみながら、
「僕は、弱虫なんかじゃない!」と、勢いよく言い放った。
「なんだこいつ、いきなり」
 うろたえた様子のバーサークがいうと、そのままおもむろに立ち上がった。
「この日のために、僕はずっとがんばってきたんだ。負けるために努力したんじゃない。勝つために努力をしたんだ」
 久遠がつづけて言った。
「だから僕は、命をかけてでも、自分の大切な人たちを守る!」
 それを聞いたみんなは、心を打たれたような顔をして、久遠のことを見ていた。
「メガネの兄ちゃんのやつ、急に元気になりやがった」
 銀司がうれしそうに言った。
「いいぞ、久遠さーん! 今度こそ、やっちゃって!」
 柚子が応援した。
 久遠は覚醒かくせいしたように眼鏡をはずし、髪の毛をかきあげて、刀を構えた。まるで別人のようになった久遠はバーサークに向かって、刀を突き立てたまま走った。
 バーサークはハンマーで防御ぼうぎょしたが、久遠の力があまりにも強く、弾き飛ばされてしまった。
 その力に圧倒されたバーサークは、
「さっきまで弱かったくせに、なにがどうなってるんだ」と言った。
 そこへ歩いてきた京一がくると、久遠と横並びになりながら、
「わからないのか? 愛の力だよ」と言った。
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