ルーカスと呪われた遊園地（下）

４ 死闘

４１

　乙葉が叫んだ。
　押し倒された久遠は、すぐに立ち上がろうと起き上がったが、それを阻止そししようとして、即座にバーサークが、久遠の体に馬乗りしはじめた。
　バーサークの体は見るからに重たそうで、久遠は身動きがとれずに、終始、苦しそうな顔をしていた。
　まもなくして、バーサークは久遠相手に、手加減なしで殴りはじめた。
　久遠は息をつく暇もないくらいに、ボコボコに殴られている。
「苦しめ！　苦しめえ！」
　殴りながらバーサークが言った。
　部屋には、ドスッ、バキッ、ボコッという、聞いていて耳を塞ふさぎたくなるくらいの、痛ましい鈍い音が響き渡っている。
　その残酷な光景を見た乙葉は、次第に耐えられなくなり、
「もう、もうやめて！」と、バーサークに向かって言った。
「お願いだから、久遠くんを離してあげて」
　しかし、バーサークは乙葉のいうことを無視し、いまだに久遠の顔を殴りつづけている。
「やめてってば……」
　そう言うと、乙葉は膝から崩れ落ちるようにして、床に座り込んだ。
　そのとなりでは苦い顔をした銀司が、見るだけでなにもできない自分を責めるように、
「ちくしょう！」と言って、自らのひざを、思いきり両こぶしで殴った。
　そして柚子は顔をそむけ、
「もう見ていられないわ」と言った。
　京一もさすがにまずいと思ったのか、休むのをやめて、
「久遠、いま助ける！」と言って、駆け出そうとした。
　しかし、次の瞬間、
「いや……待ってください！」と、殴られつづけて苦しんでいるはずの久遠が、京一に向かって叫んだ。
　するとそこで、バーサークは一度殴っていた手を止めて、久遠を上から奇妙に見下ろした。
「え？」
　京一は動きを止めて聞き返した。