125 / 246
4 死闘
6
しおりを挟む
肝心なことは言おうとせずに、京一はドアに向かって歩き出すと、そのまま本当に、外に出ていってしまった。
「もういっちゃったわ」
京一がいなくなった小屋の中で、乙葉が不満を口にした。
「まあ、気にしない方がいいよ」
内田が言った。
「それより、乙葉ちゃんもどう? 僕の作ったブタナの天ぷら。味はおいしくないけど、すこしはお腹の足しになるよ」
そう言うと、内田は乙葉の前に、天ぷらの皿を置いた。
「いや……私は、遠慮しておきます」
乙葉はその皿を、内田にすっと返しながら言った。
「ええ、そう?」
なぜかおどろきながら内田が言った。
「けど、よく考えたらそうだよね。最初から苦いって知ってるのに、食べるわけないよね」
「もう、内田ってば、そんなの当たり前じゃん」
ルーカスが呆れたように言った。
「ほんとなに言ってるの? 僕たちが留守にしてる間に、頭おかしくなっちゃったんじゃない?」
「失礼な、僕は正常だよ」
胸を張りながら内田が言った。
「ただ、みんなを待っている間、どうしても料理しないと気が済まなくて……それにお腹もすごく空いていたし。だから作ってみただけなんだ。みんなにも味見してほしかったし」
すこしばかりしゅんとなって、内田が言った。
「まあでも、ほかにすることがなかったのなら、仕方ないわよね」
内田をフォローするように、乙葉が言った。
「ねえ、それより、京一はどこにいったんだろう。もうすぐバーサークが見まわりに出る時間なのに」
「それならさっき、京一が心配いらないって言ってたじゃん。だから大丈夫だよ」
楽観的にルーカスが言った。
「そうかしら」
「もういっちゃったわ」
京一がいなくなった小屋の中で、乙葉が不満を口にした。
「まあ、気にしない方がいいよ」
内田が言った。
「それより、乙葉ちゃんもどう? 僕の作ったブタナの天ぷら。味はおいしくないけど、すこしはお腹の足しになるよ」
そう言うと、内田は乙葉の前に、天ぷらの皿を置いた。
「いや……私は、遠慮しておきます」
乙葉はその皿を、内田にすっと返しながら言った。
「ええ、そう?」
なぜかおどろきながら内田が言った。
「けど、よく考えたらそうだよね。最初から苦いって知ってるのに、食べるわけないよね」
「もう、内田ってば、そんなの当たり前じゃん」
ルーカスが呆れたように言った。
「ほんとなに言ってるの? 僕たちが留守にしてる間に、頭おかしくなっちゃったんじゃない?」
「失礼な、僕は正常だよ」
胸を張りながら内田が言った。
「ただ、みんなを待っている間、どうしても料理しないと気が済まなくて……それにお腹もすごく空いていたし。だから作ってみただけなんだ。みんなにも味見してほしかったし」
すこしばかりしゅんとなって、内田が言った。
「まあでも、ほかにすることがなかったのなら、仕方ないわよね」
内田をフォローするように、乙葉が言った。
「ねえ、それより、京一はどこにいったんだろう。もうすぐバーサークが見まわりに出る時間なのに」
「それならさっき、京一が心配いらないって言ってたじゃん。だから大丈夫だよ」
楽観的にルーカスが言った。
「そうかしら」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~
友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。
全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。
霊能者、はじめます!
島崎 紗都子
児童書・童話
小学六年生の神埜菜月(こうのなつき)は、ひょんなことから同じクラスで学校一のイケメン鴻巣翔流(こうのすかける)が、霊が視えて祓えて成仏させることができる霊能者だと知る。
最初は冷たい性格の翔流を嫌う菜月であったが、少しずつ翔流の優しさを知り次第に親しくなっていく。だが、翔流と親しくなった途端、菜月の周りで不可思議なことが起こるように。さらに翔流の能力の影響を受け菜月も視える体質に…!
人形サクラッチに変身した少女サクラのお話
燦一郎
児童書・童話
サクラはアヤちゃんとケンカして学校に行けなくなった。一日中部屋でじっとしている。
「いっそジェニファーのような人形になってしまいたい」
するとジェニファーが声を出した。
「人形の精、マリークリスティーン様ならあなたを人形に変えられるのよ」
サクラは人形に変身し、デパートのショーケースに並べられた。
でも大変なことになった。あのアヤちゃんがやってきて、誕生日のプレゼントにと人形サクラを買ってもらったのだ。
「この人形、サクラちゃんにそっくり」
万事休す。
「まさかアヤちゃんに買われるなんて」
アヤちゃんはその人形に「サクラッチ」と名付けた。
人形は人の心を読む力があり、サクラッチは今まで見えなかったアヤちゃんの気持ちを知った。
それは意外なものだった。
「人間に戻りたい……」
さてサクラッチはどうなるのか。
まっくら山のふしぎバス
スズキヒサシ
児童書・童話
まっくら山に引っ越してきた四年生のまりなちゃんは、まだ友だちがいません。
山のふもとにある学校は遠くて、おばあちゃんの車で通っています。
ところが、おばあちゃんがぎっくり腰になってしまい、一日に二本だけ山を走るバスに乗ることになりました。
それはとても、ふしぎなバスだったのです。
不死鳥の巫女はあやかし総長飛鳥に溺愛される!~出逢い・行方不明事件解決篇~
とらんぽりんまる
児童書・童話
第1回きずな児童書大賞・奨励賞頂きました。応援ありがとうございました!!
中学入学と同時に田舎から引っ越し都会の寮学校「紅炎学園」に入学した女子、朱雀桃花。
桃花は登校初日の朝に犬の化け物に襲われる。
それを助けてくれたのは刀を振るう長ランの男子、飛鳥紅緒。
彼は「総長飛鳥」と呼ばれていた。
そんな彼がまさかの成績優秀特Aクラスで隣の席!?
怖い不良かと思っていたが授業中に突然、みんなが停止し飛鳥は仲間の四人と一緒に戦い始める。
飛鳥は総長は総長でも、みんなを悪いあやかしから守る正義のチーム「紅刃斬(こうじんき)」の
あやかし総長だった!
そして理事長から桃花は、過去に不死鳥の加護を受けた「不死鳥の巫女」だと告げられる。
その日から始まった寮生活。桃花は飛鳥と仲間四人とのルームシェアでイケメン達と暮らすことになった。
桃花と総長飛鳥と四天王は、悪のあやかしチーム「蒼騎審(そうきしん)」との攻防をしながら
子供達を脅かす事件も解決していく。
桃花がチームに参加して初の事件は、紅炎学園生徒の行方不明事件だった。
スマホを残して生徒が消えていく――。
桃花と紅緒は四天王達と協力して解決することができるのか――!?
おねこのさんぽみち
はらぺこおねこ。
児童書・童話
おねこのうたを詩や物語にしてみました。
今まで書いた詩を……
これから書く詩を……
徒然るままに載せていきます。
また。ジャンルがなにになるかわかりませんのでおそらく一番近い「児童書・童話」で書かせていただきます。
天空の魔女 リプルとペブル
やすいやくし
児童書・童話
天空の大陸に住むふたりの魔女が主人公の魔法冒険ファンタジー。
魔法が得意で好奇心おうせいだけど、とある秘密をかかえているリプルと、
基本ダメダメだけど、いざとなると、どたんばパワーをだすペブル。
平和だった魔女学園に闇の勢力が出没しはじめる。
王都からやってきたふたりの少年魔法士とともに、
王都をめざすことになったリプルとペブル。
きほんまったり&ときどきドキドキの魔女たちの冒険物語。
ふたりの魔女はこの大陸を救うことができるのか!?
表紙イラスト&さし絵も自分で描いています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる