ルーカスと呪われた遊園地（下）

４ 死闘

５

　乙葉はその様子を見て、思わず苦笑した。
「なにがいけなかったのかな？　やっぱり、この草かな」
　いぶかしげに天ぷらを眺めながら、内田が言った。
　その時、京一も内田と一緒になって、その天ぷらをじっくり見ると、ふいに、
「内田さん。これ、ブタナですよ」と言った。
「ブタナ？」
　初めて聞く名前だというように、素すっ頓狂とんきょうな顔をして、内田が言った。
「ブタナの見た目は、タンポポにとてもよく似ているんです。でも、草丈くさたけが高くて、花がタンポポよりもちいさいんですよ。ちなみにフランス語では、豚のサラダと言われています。食べても害はないですけど、人によっては、すごく苦いと感じる雑草です」
　京一が説明した。
「へえ、そうだったんだ」
　感心しながら内田が言った。
　京一は箸をとると、そのブタナの天ぷらを一つ摘つまんで、口に入れた。
　そして何度か噛み砕いてから、
「別に悪くないですよ、これ」と言った。
「ええ？　ちょっと、京一の味覚、どうかしてるんじゃないの？」
　苦い顔をしながら、乙葉が言った。
　しかし京一は本当に、いやな顔をひとつしないで、その雑草の天ぷらを黙々と食べている。
「じゃあ後、残ったこの雑草の天ぷら、京一が全部食べたらいいじゃん」
　ルーカスが言った。
「いや、さすがに全部はいらない。もうこれで十分だ」
　京一は即座に拒否した。
「えー、いらないの？」
　残念そうに内田が言った。
　すると京一は突然、椅子から立ち上がって、
「じゃあ俺、ちょっと出かけてくる」と言った。
「え？　京一、出かけるってどこに？」
　いきなり外に出ると言い出した京一にたいして、戸惑いながら乙葉が言った。
「心配するな。完全に暗くなるまでには、戻ってくる」