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3 かくれんぼ

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 それから乙葉と京一、ルーカスの三人は、柚子たちのことを名残惜しく見下ろしながらも、地上に上がるための階段に向かって、飛び去っていった。
 なにが安心しろ、だ。バーサークの言葉を聞いた乙葉は、心の中でそう思った。そして乙葉の中では、バーサークにたいする猛烈な怒りが、沸々ふつふつと込み上げてきているところだった。
 乙葉の大事な妹・柚子、友達の久遠、乙葉を暴走するジェットコースターから助けるためにがんばってくれた銀司。
 そんなみんなを苦しめさせて、牢屋に閉じ込めるだなんて、絶対に許せない。なんとしても、あの三人を助け出してみせる。乙葉はそう心に決めた。
 そうして乙葉がなにも言わずにだまって考えていると、ルーカスが心配そうな顔をして、
「乙葉、大丈夫?」と、尋ねてきた。
「うん、私は全然平気」
 乙葉がルーカスを安心させるように、明るくそう言った。
「でも、捕まったみんなのことを思うと、胸が苦しくて」
「気にしない方がいいよ」
 ルーカスが言った。
「久遠と銀司の二人は、まだちゃんと生きていることがわかったんだし、あとでまた助けにいったらいいじゃん。ね? だから元気出して」
「——そうね。ありがとう、ルーカス」
 ルーカスに励まされた乙葉が、笑顔で言った。
「それはそうと乙葉、思いつきで行動するのも大概たいがいにしとけよな。こっちの身にもなれっていうんだ」
 京一が不満げな顔をして言った。
「それは、ごめん」
 乙葉は素直に謝った。
「ところで、いまあの二人は、柚子とおなじ檻の中に入れられているのよね。だったら、いますぐ鍵があるバーサークの部屋までいって鍵を探して、檻からバーサークがいなくなった頃を狙って、みんなを助け出しましょうよ」
「たしかに! それ、いい考えだね!」
 即座にルーカスが同調した。
 しかし、
「それはダメだ」と、きっぱりと京一が断った。
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