上 下
110 / 246
3 かくれんぼ

27

しおりを挟む
 すると途中から、突然、京一の目の色が変わったと同時に、形勢けいせい逆転になった。京一は強い力で刀を振り、バーサークの持っていた鉄パイプを、遠くに飛ばしたのだ。
 鉄パイプはカランカランと音を立てて、地面に転がっていった。
「あ……」
 バーサークは、目の前で起こったことが信じられずに、一言そう発した。
「やったー!」
 柚子がよろこんで、手をげて言った。
「すごいね、京一!」
 ルーカスも、勝利した京一を見て、高らかに声を上げた。
「くそ!」
 鉄パイプをとられたバーサークは、くやしそうに、上げたこぶしを振り下ろした。
「おい、ムム! そこにいるんだろ? いますぐ出てこい!」
 バーサークがおこりながらそう言うと、牢屋の奥で、おびえながら隠れていたムムが、おそるおそる前に出てきた。
「はい、なんでしょう。ご主人様」
 ムムは震えながらも、うやうやしく言った。
「あれ持ってこい! すぐに!」
 横柄おうへいな態度で、バーサークが言った。
「はい、かしこまりました」
 ムムは大人しくバーサークのいうことを聞き、牢屋の奥から、人の頭くらい大きなサイズの、ハンマーを持ってきた。
「どうぞ」
 そう言うと、ムムはバーサークに持っていたハンマーを渡した。
「よし。これさえあれば、もうこっちのものだ」
 強気でバーサークが言った。
「お前、覚悟しとけよ。俺様にたて突いたことを、ひどく後悔させてやるからな!」
小賢こざかしいな」
 京一が言った。
「いくぞ!」
 バーサークが言うと、今度は刀とハンマーを使った、戦いがはじまった。若干、京一の方がされているような気がしたが、なんとか耐えているように見えた。
しおりを挟む

処理中です...