上 下
86 / 246
3 かくれんぼ

3

しおりを挟む
 考えながら久遠が言った。
「知るかよ。シャッターが下りる前に、運よく出ていったんじゃねえのか?」 
 ルーカスのことなど、どうでもよさそうに銀司が言った。
「そんなことより、俺たちはどうすりゃいいっていうんだよ。あいつに追いかけられてるってのに、出口ふさがれてよ。これじゃ俺たち、袋の中のねずみじゃねえか。このままじゃあいつに追いつかれて、すぐに殺されちまうぞ」
「とにかく、バーサークがくる前に、すぐにどこかに隠れた方がいいと思います」
 落ち着いて久遠が提案した。
「い、いや、でもよ、隠れたところで、城の中にいたらどうせ見つかっちまうぞ。時間の問題だ」
 動揺しながら銀司が答えた。
「それはそうですけど、ほかに出口もないようですし、もうそれしかほかに方法が……」
「お前たちー! 絶対に逃がさないぞ!」
 久遠が話している途中で、階段の上から、バーサークがそう叫ぶ声がした。
「うわっ、きやがった」
 あわてて銀司が言った。
「こうなりゃ仕方ねえ。じゃあな、兄ちゃん。俺はこっちに逃げるぜ。お前みたいな人のいい兄ちゃんに会えて、よかった」
 まるで最後の言葉のように銀司がいうと、二階の廊下の奥を目指して、一目散に逃げていった。
「えっ、ちょっと銀司さん! どうせ逃げるんなら、一緒に逃げましょうよ!」
 走り去る銀司に向かって、久遠が大きな声で言った。
 しかし銀司は振り返りもせずに、先へとすすんでいくばかりだった。
「これじゃ、みんなバラバラじゃないですか……」
 久遠は頭を抱えた。
「でも、いまはそんなことを言っている場合じゃない。僕もはやく逃げないと」
 すぐに考え直すと、久遠も銀司とおなじように、二階のどこか隠れられる場所を探しに、急いで行動した。

                 ♢♢♢
しおりを挟む

処理中です...