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2 不思議なお城
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『八月十四日。夜になると、不安になってきて仕方ない。バーサークがここまで登ってきて、私を殺してしまうかもしれない。そんな悪い妄想が、次々と頭に浮かんできて、いてもたってもいられなくなる』
『八月十五日。ねえ、お願い。誰でもいいから、私を助けて。ここから出して』
これを最後に、日記は終わってしまった。
かわいそうに。きっとこの日記を書いた人は、このあと、バーサークに殺されてしまったにちがいない。
乙葉は、以前ここに住んでいた人の悲惨な過去を、日記という形で目にして、すっかり気分が沈んでしまった。
しかし、なんとか心を入れ替えて、
「さ、ここにはムムがいないことがわかったことだし、ほかを探しましょう」と言った。
乙葉はツリーハウスから出てすぐに、さきほどのロープをつかんで慎重に下までおり立つと、ふたたび果樹園を見てまわった。
しばらく歩いていると、なにやらモモの木の上で、ヒラヒラとはためく、つぎはぎだらけの汚れた布が目に入った。
「ん?」
不思議に思ってそういうなり、乙葉は足を止めた。
どうやらよく見ると、見た目はリスのようで、ふさふさの尻尾や耳が布から出ているのがわかった。そのリスはいま、木にハシゴをかけてモモを収穫している。
その様子を見た乙葉は、途端にハッとした顔になった。そして徐々に、リスのそばまで近づいていくと、
「ひょっとして、あなたムムじゃない?」と、遠慮がちに話しかけた。
そう話しかけられたのがあまりにいきなりのことで、リスはひどくおどろき、体をビクッと震わせた。しかもその拍子に、足を滑らせてハシゴから落ちてしまった。
「わっ、大変!」
乙葉は急いで、リスの元まで駆けつけた。
どっしんという鈍い音を立てて、尻から地面に落ちてしまったそのリスは、座り込んだ状態で、とても痛そうにしながらお尻をさすっている。
『八月十五日。ねえ、お願い。誰でもいいから、私を助けて。ここから出して』
これを最後に、日記は終わってしまった。
かわいそうに。きっとこの日記を書いた人は、このあと、バーサークに殺されてしまったにちがいない。
乙葉は、以前ここに住んでいた人の悲惨な過去を、日記という形で目にして、すっかり気分が沈んでしまった。
しかし、なんとか心を入れ替えて、
「さ、ここにはムムがいないことがわかったことだし、ほかを探しましょう」と言った。
乙葉はツリーハウスから出てすぐに、さきほどのロープをつかんで慎重に下までおり立つと、ふたたび果樹園を見てまわった。
しばらく歩いていると、なにやらモモの木の上で、ヒラヒラとはためく、つぎはぎだらけの汚れた布が目に入った。
「ん?」
不思議に思ってそういうなり、乙葉は足を止めた。
どうやらよく見ると、見た目はリスのようで、ふさふさの尻尾や耳が布から出ているのがわかった。そのリスはいま、木にハシゴをかけてモモを収穫している。
その様子を見た乙葉は、途端にハッとした顔になった。そして徐々に、リスのそばまで近づいていくと、
「ひょっとして、あなたムムじゃない?」と、遠慮がちに話しかけた。
そう話しかけられたのがあまりにいきなりのことで、リスはひどくおどろき、体をビクッと震わせた。しかもその拍子に、足を滑らせてハシゴから落ちてしまった。
「わっ、大変!」
乙葉は急いで、リスの元まで駆けつけた。
どっしんという鈍い音を立てて、尻から地面に落ちてしまったそのリスは、座り込んだ状態で、とても痛そうにしながらお尻をさすっている。
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